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教室のアリ 第37話 「5月28日②」〜「5月30日①」〈久しぶりの働きアリ〉

 オレはアリだ。長年、教室の隅にいる。クラスは5年2組で名前はコタロー。仲間は頭のいいポンタと食いしん坊のまるお

〈敵か味方か〉
まるおは猛反対だ。
「ボクを後ろから攻撃してきた奴と手を組むのはイヤだイヤだ!てか、蝿と手を組んでどうするのさ!ダイキくんをどうやって助けるのさ?」
ポンタは再び説明をはじめた。
「蝿は飛べる」
「そんなことは、知っている!」
「だから上から、サクラちゃんの答えが見える。ボクたちは見えない」
「で?」
「だから、蝿には正解がわかる。それを教えてもらって正解のところにうんち💩をするんだ。そのうんち💩をダイキくんが○をすれば正解だから、点数が取れる。それしか方法はない!」珍しく強い口調でポンタが言った。まるおは黙って考えていた。ヒラヤマ先生は、ヒダサンミャクとギフケンの説明をしていた。ダイキくんは必死に黒板を見ていた。オレはまるおに言った。
「これしかない。これしかないんだよ。頼む、まるお!」まるおは頷きながら言った。
「前の日たくさん食べて、たくさんうんち💩をしなきゃいけないね」まるおはまるおだった。オレはポンタに聞いた。
「蝿にお願いするのは、どうやって?」
「前みたいに、給食室にエサを集めて蝿が来るのを待つ。で、蝿がきたら頼んでみる」
ヒラヤマ先生はカントウヘイヤとトネガワの説明をしていた。
「ちなみにだけどアラカワはトウキョウワンに出ます。ディズニーに行く時、電車から大きい観覧車が見えますよね?あのあたりです」
オレはちゃんと聞いていた。野球場のレフトの白い棒の先にあるアラカワはトウキョウワンへ流れているのだ。

〈久しぶりの給食室〉
なんか、しばらく行ってなかった。蝿とまるおの戦いは5月5日だった気がする。

 オレたちは給食をよくこぼす1階の1年生のクラスから給食室にエサを運んだ。放課後にはスーパーマーケットに行ってエサを集めたりした。自分たちが食べるのは少し減らして、棚の奥にキレイに集めた。火曜日からはじめて、水曜日も木曜日も必死になって働いた。まるで昔、女王アリ様のために運んだように一生懸命頑張った(まるおはつまみ食いをしていたけど…)。そして木曜日の夜、エサの山は十分な大きさになり、最後にヒラヤマ先生の机の中から運んだハイチュウをのせた。「これで蝿は来る」ポンタは言った。学校には誰もいない。校舎の外の電灯が静まり返った給食室を少しだけ照らしている。オレたちは部屋の隅でじっとしていた。

「ブーーン」聞いたことのある音がした。


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