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いつも青春は時をかける 20.4.13
筒井康隆原作『時をかける少女』は、これまでに何度か映像化されている。
もっとも古い作品はNHK「少年ドラマシリーズ」第1作『タイム・トラベラー』。
放映時、僕は二歳(!)なので、さすがに観ていないが、のちに小学校の図書館で、原作本(表紙がドラマの写真)を見た。それが、『時かけ』との初めての出会いになる。
この『タイム・トラベラー』に関しては、脚本家石山透氏による続編の小説・シナリオ集を手に入れるほどに大ハマりする。
ちなみに、石山氏はその後大ヒット人形劇『プリンプリン物語』の脚本を手掛け、58歳の若さで亡くなる。
原田知世(以下知世)主演、映画『時をかける少女』が公開された時、僕は中学2年生(知世より2歳年下)だった。
当時の知世は、角川映画の大型新人コンテストに入賞し、大々的に売り出されたアイドルだったが、先輩の薬師丸ひろ子の後追いというイメージが正直あった。
たとえば、『セーラー服と機関銃』『ねらわれた学園』など、薬師丸ひろ子が映画でやった役をそのままテレビドラマで演じるという、言ってみれば「お下がり」的な感じが子供心にも違和感をおぼえさせていた。
特別な美少女というわけではなく(田舎のイモ中学生にはそう見えた)、演技も……で、特に初ドラマ主演の『セーラー服と機関銃』に至っては、「学芸会演技」とも言えるたどたどしさであった。
とはいえ、当時の角川と言えば飛ぶ鳥を落とす勢いで、売り出しにさらに攻勢をかけるべく、彼女の初映画主演作として選ばれたのが、この『時をかける少女』である。
ちなみに、映画館では観ていないが、のちにテレビで何度か拝見することになる。
正直、知世の演技は相変わらずたどたどしく(彼女だけではないが)、まだまだ素人レベルに見えた。
ただ、それまでの彼女と大きな違う点として、それまでロングヘア―だったのを、バッサリとショートにした。(正確には、ドラマ版『ねらわれた学園』から)
彼女自身においてはその程度の違いである。
ストーリーはSF絡みの、アイドル映画定番の純愛ものだが、舞台が尾道であるため、必然的にノスタルジー溢れる背景で埋め尽くされる。知世演じるヒロイン芳山和子もまた、上映当時においてさえ、かなり古風で、10~20年前の少女のような言葉遣いをする。
言ってみれば、おじさん(大林監督・角川春樹《製作》)が思い描くところの「理想の少女」なのだが、当時の知世の、少女から大人になる寸前の、匂い立つような「(少女)性」を切り取り、かつ大時代的とも言える「純愛」をクローズアップしたこの映画は、当時の少年・青年たちの心を鷲掴みにして大ヒットし、知世は一躍トップアイドルとなる。
その後の知世の活躍については言うまでもない。
もう一つ触れておきたいのが、劇伴(BGM・サントラ)の存在。
ユーミンの旦那様、松任谷正隆が作曲しているのだが、フルオーケストラで、時折ポロンホロンとハープが奏でられる、ただひたすらに少女漫画のような「おとめちっく」な音楽である。
このように、「少女の揺れ動く心境」を表現した曲を、一般男性が好むかはわからない。
ただ、僕は――少年、青年であった僕は、この、(当時、男が好むと『おかしい』と馬鹿にされていた)「少女・乙女性」に何度も助けられ、また、それを自分の中に自覚し、小説らしきものを書く立場としては、古典的な「純愛」の要素がDNAに刻み込まれた。
それにプラスして、『タイム・トラベラー』のエンターテイメント(娯楽)性。
少年が50歳の「元少年」に時をかけても、この作品はかけがえのない存在であり続けている。
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