飛田流@もう一つの人生 20.4.1
僕は、例年4月1日、エイプリルフールにネタ(主におふざけ小説)をやっているのだが、今年は時期が時期ということもあり、悩んだ挙句、前日にツイッターでこのような告知をした。
【おしらせ】明日はご存知のようにエイプリルフールですが、世情を考慮し、ぎりぎりまでネタをやっていいものか悩んだのですが、次々とイベント・祭りが中止されることがとても寂しくもあり、とりあえずやってみることにします。
テーマは「飛田流のもう一つの人生」。
僕は今50歳ですが、結婚して大きな子供がいてもおかしくない年齢です。
そこで、もし、結婚して子供がいたら……という仮定で、明日ほぼ一日はなりきりでつぶやかせていただきます。(当たり前ですが、今世間を騒がしている例のアレについてはつぶやきません)
家族構成は妻一人(48)・子供二人(長女23・長男21)。
本人は、某企業に勤める50歳のノンケ(異性愛者)サラリーマンで、性格は愚痴っぽくて気難しく、部下からも家族からもうっとうしがられている設定。(※今適当に考えた)
リプライをいただいても構いませんが、そのキャラでお返事するので、失礼な内容になるかもしれませんことをご了承ください。
今日急に思いついたネタなので、企画倒れになるかもしれませんが、まぁ、それもご愛敬で……。
それでは、また明日。
で、4月1日当日、上のつぶやきにリツイートする形で、「もし飛田流が結婚して、成人した子供もいる50歳の父親だったら」という体《てい》でなりきりつぶやきを開始した。(各つぶやきの下にあるのは、投稿時刻)
*
今日も隣家の車のエンジン音で起こされる。エンジンスターターか何かは知らぬが、6時きっちりにエンジンがかけられて、6時半に出発するまで延々とエンジン音が鳴り響いている。全くもって近所迷惑である。
現在会社から自宅で仕事をするように命じられているので、私としてはもう少し寝ていたいのだが
07:08:56
何故妻も子供達も、私が用を足した後のトイレを極端に嫌うのか。
07:18:52
「お父さんはいつもの缶詰で大丈夫よね」
何故私の意見を聞こうとしない。
07:26:48
今日は燃えないゴミの日だったか。
出社しなくても、ゴミを出すのは私の役割である。
07:37:51
アイコンの写真は我が家の飼い犬ガブリエルである。
(※という設定)
名前の由来は、彼が我が家にやってきた時、真っ先に私の手を噛んだからである。
もちろんこの命名に、私の意見は1ミリも入っていない。
08:17:39
妻との出会いは結婚相談所の紹介である。
特別惹かれるわけではなかったが特別不満があるわけでもなく、態度を保留していたら、いつのまにか結婚式の日取りが決まっていた。
当時妻はそこそこ美人で気立ても良くそれが結婚に至った要因でもあるのだが、今や体型的にも性格的にも当時の面影は全くない
09:10:11
妻よ
私の問いにおならで返答するのはよしてくれないか。
09:11:39
本来なら今頃会社にいる時間なのだが、例の問題で自宅で待機をしつつ、自分の部屋で仕事をしている。
「あらお父さん今日も会社に行かないの」
妻よ
露骨にがっかりした顔をされると、50歳男子もそれなりに傷つく。
10:20:07
母さん今日の昼飯は……?
また冷凍グラタンか。
いや文句を言ってるわけじゃないんだが……。
食費の方はどうなってるんだい。
私は社食で毎日1コインを超えないように
ああ、うん、わかった。黙って食べるから。
13:07:53
二人の子をなして以来、妻とは寝室を別にしている。私のいびきがうるさいからとの申出による。
その辺りから妻とは……である。私から誘ってみたこともあったが、当然のように断られ、今では私自身「その気」さえ起きなくなってしまった。
ちなみに「遊び」に出たかは
ノーコメントとさせていただく
14:26:14
「お父さんあたしのシャンプー使ったでしょっ」
い、いや、使ってなど…。
「嘘、お父さんがお風呂に入った後、戸棚に隠してたシャンプー減ってたもん」
それは、私のが切れてたから…。
「ホント、余計な事しないで」
「大きくなったらパパのお嫁さんになる」と言ってくれたあの子はどこに行ったのか
15:46:41
先月まで普通に会社に通っていたのがいきなりテレワークと言われても困る。何とかいうソフトをパソコンに導入して会議の時に内蔵カメラで自分を映すらしいが、会社であれば部下に任せられてもここは自宅だ。仕方なく大学が休講中の息子に頼む。
「超受ける」
何が「受ける」のか。面白い事はしていない
16:39:31
仕事に一区切りつけて部屋から出てきたら、居間の明かりが消えていて、置き手紙が。
「しばらく食べられなくなるかもしれないので、みんなでお寿司屋さんに行ってきます」と妻の字で。
「冷蔵庫の残り物チンして」と最後にある。
何故
何故私に一言声を掛けない。
「みんな」に私は入っていないのか。
19:56:27
私は猛烈に腹が立った。
結婚して24年、妻一筋……いや、色々あったにせよ、酒にも賭け事にも溺れず、家族に愛情を注いできたつもりだ。その結果がこれだというのか。
激情に駆られた私は二階に上がり、子供たちの部屋の前に立つ。良き夫であり良き父である私は、今まで勝手に中に入ったことはない。
20:14:59
だが、今日は別だ。
そもそも私は、彼らの父親である。成人を過ぎたとはいえ、子供たちの行動を管理するのは当たり前ではないか。
私は娘の部屋のドアに手を
いや、あれは勘が鋭い。さっきのシャンプーの一件でも明白だ。やめておこう。
私は廊下を戻り、息子の部屋のドアに手を掛けて静かに開いた。
20:22:34
ベッドの脇に置かれていたマンガ本。いや、コミックスにしては妙に薄い。
表紙では、擬人化された熊とゴリラが、意味ありげに見つめ合っている。
(……大人にもなってまだこんな物を)
私は鼻で笑いながらページをめくった。
そこには
口に出すのもためらわれる、破廉恥な行為が繰り広げられていた。
20:33:52
男同士が……いや、動物なのでオス同士になるのか。
とにかく同性同士がなぜ「このような」ことを……。
ということは、もしや私の息子も
そんなはずはない。
高校まで男子校に通い、大学ではアニメ研究会に所属し、いまだに女っ気はないが
そんなはずはない!
私は……一体どうすればいいのか。
(※このツイートでアンケートを実施)
見なかったことにする 0%
「薄い本」を破り捨てて息子を問い詰める 0%
とりあえず息子に話を聴く 100%
その他(コメントなどで) 0%
20:49:14
家族が帰って来てからも、私は息子に話を聴くことが出来なかった。
部屋に戻った私は、本のタイトルを思い出し、スマホで検索をしてみた。
それは、どうやら「ケモホモ」とかいうジャンルらしい。
ニュースでは度々聴いたことがあるが、まさか、私の息子が……
私の育て方が間違っていたのだろうか。
21:44:41
この歳になってふと考えることがある。
もし、今でも独身でいたらどんな人生を送っていたのだろうと。
好きな時に好きな場所に行き、好きな物を食べ、誰にも邪魔されない時間を過ごす。しかし、年老いてから面倒を見てくれる人間もまた存在しない。
世間体を考えればもはやそのような生き方は望めない
21:59:43
もし、今が平常時であれば、私は息子を叱ったかもしれない。
しかし、日本が、いや、世界中が危機に瀕している今、自分を偽る事に意味があるのだろうか。
まずは今を生き抜く、それが先決である。
そのうえで、いつかこの騒動が終息し、平穏が再び訪れた時、息子にさりげなく訊いてみよう。
【完】
22:13:45
*
なんかもっと暗~い話にするつもりだったんだけど、最後の最後でこんな感じに。
息子の「秘密」は、書いている途中で考えた。
アンケート結果は「自分ならこうされたい」なのかな。
別にエイプリルフールに何か「新作」を書く縛りがあるわけではないんだけど、なんかついやってしまう。
たとえば、「宝くじ一等当たりました!」的な嘘だと、なんか芸が無いし、読んでても面白くないだろうなと思うし。
悲しいニュースばかりで、今年はやめようかとも思ったんだけど、自粛・中止が続く今だからこそやりたいと思って。
今日もつらいニュースが多かったけど、どんな状態でも(周りに迷惑をかけない前提で)楽しむことは必要かなと思う。
事態はまったく予断を許さないけど、どうかみなさんご無事で。もし余裕があれば、ご自分なりの楽しみ方を見つけてみては。
たとえば
読書とか
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