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優れる宝 子にしかめやも 20.4.23


人はいずれ死ぬ。
誰だってそうだし、僕だってそうだ。
でも、それが「今」か、と問われれば、直ちにはうなずけない。


これまでにも何度となく書いているが、僕は、かなり以前から帯ドラマとホームドラマのファンである。特に、脚本家の布施博一先生(代表作は『熱中時代』『西遊記』『たけしくん、ハイ!』『まんが道』『純ちゃんの応援歌』など)のドラマは、ほぼすべて観ている。

その中の一つで、岡江久美子さんが主演された、昼ドラ『天までとどけ』
1991年から1999年まで全8シリーズに渡って放送されたこの作品は、彼女にとって代表作の一つと思われる。
このドラマを演じるまで、岡江さんの個人的なイメージは、「女優」寄りというか、美人過ぎて多少ツンケンしている人なのかな、という印象があった。
同時期に放送されていたドラマ『七人の女弁護士』で演じた、多少攻撃的なヤメ検(検事出身)の弁護士のように。

だが、『天までとどけ』、さらには『はなまるマーケット』の司会で、気さくでひょうきんな人柄であることが知れ渡り、ますますファンになっていった。


これも時々書いているが、僕は、20代中盤ごろから、人生史上最悪の時期に突入し、半自暴自棄になっていた。それが、このドラマの放送時期と重なる。
正直、精神的に観るのがしんどい部分もあったのだが、それでもビデオテープに録画し(帯ドラなので、かなりの本数が必要になる)、視聴していた。

第一シリーズの最終回は、言葉にできないほどの素晴らしい出来栄えであり、この番組からはっきりと布勢先生、そして、優しくかつ芯の強い母親を演じた岡江さんのファンになった。



『天までとどけ』はのちに、BSで全シリーズ再放送され、全話録画し、数年かけて全て視聴したのだが、作品としてはやはり面白く、あらためて僕自身に強い影響を与えていたことを再認識した。

大変恥ずかしい話だが、岡江さんが自分の母親であったら……などと、夢想したことも、あったようななかったような……。(綿引さん<夫役>は理想のパパ……)



たった今、第一シリーズの最終回、そして、最終シリーズの最終回を観直してみた。


第一シリーズ最終回で、こんなシーンがある。

定子(岡江さん)「高校時代にね、山上憶良の歌を習ったの。万葉集の。
『瓜食(は)めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲(しぬ)はゆ
いづくより 来りしものそ 目交(まかない)に もとなかかりて 安眠(やすい)しなさぬ』

この歌の反歌が素敵なのよ。
『銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむに 優れる宝 子にしかめやも』」

雄平(綿引さん)「『銀も金も玉も何せむに』」

定子「『優れる宝』」

雄平「『優れる宝』」

定子・雄平「『子にしかめやも』」


いつものように、明るく、美しく、しとやかな岡江さんがそこにいる。


――まだ信じられない。





最終シリーズ最終回の締めくくりは、岡江さんのこのナレーションで締めくくられる。


「これで私たち丸山家の物語は終わります。――いいえ、新しい出発です。
私たち夫婦と十三人の子供たちが、これからも皆様の身近などこかで成長を続けていくと思います。
八年の長い間、私たち一家を温かく見守ってくださって、本当にありがとうございました。

では、皆様もお幸せに。

さようなら」

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