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会社設立はじめの一歩(前編)...会社の基盤作り

 皆さん、暑くなってきましたね。またコロナも再燃している状況です。どうかくれぐれもご自愛下さい。

 これまで私のコラムはベルテックスを中心に配信してきましたが、静岡の二輪レースチーム生形のことや、サッカー界を含むスポーツビジネス全体も今後視野に入れた執筆活動となって参りますので、発信元を私の会社「スポーツBiz マネジメント」とすることに致しました。ベルテックスコラムの方には、配信内容の関連性によってリンクさせるか否かの判断を行いながらの運用とさせて戴きます。
どうかご理解の程、宜しくお願い致します。
 
 さて今回は、少し地味で渋い話かもしれませんが、ベルテックス移籍にあたり、一番大事に考えてきた内容ですので、二編に分けてお話をさせて戴ければと思います。

 今月でプロスポーツ事業に携わって20年目の節目を迎えました。この業界では単年契約でやっていますので、毎年秋口になると来年はどうなることやらと少し気にしての19年間だったと思います。ですので、フロントというより監督やコーチ、選手に近いメンタリティだったかと。

 大きな親会社のあるマリノス、当時は小さな株主の集まりだったベルマーレ、鈴与さんを筆頭に地元大手法人に支えられているエスパルス、出来て間もないベルテックスと全く違うタイプの4クラブに在籍し、その間請われるままに7社の顧問を勤めました。社長としての公式戦通算成績は、403試合 185勝85分133敗…これらの歴史に加えて日産自動車時代22年の歴史が今の自分を作っており、今それらを総動員しながら仕事をさせてもらっています。

 それらの経験の中で、ベルテックスのサポートで一番使っている引き出しは、「会社の基盤作り」と「営業力の醸成」です。どちらも立ち上げ間もない法人として必須のものですが、意外と前者の重要性が軽んじられるケースが多いことを過去来体験していますので、気を配らなければいけないなと思っています。また、後者については、大手企業等で自然と身につけていく多くの対人経験を通じた社会人の基本となるマナーや気配りが、出来立ての小さな会社では会得し難いこともあって、自らの営業を見てもらいながらの毎日を過ごすようにしています。

 「会社の基盤」とは、一言で言えば、「人を大事にする」「モノ、コトが公正に決定される」「お金が正しく動く」が一丁目一番地だと思っています。

 特に「人を大事にする」について、一般企業では当たり前インフラであっても出来立ての会社では、作り出していかねばならないもの、例えば就業規則や年間カレンダー、三六協定、社会保険関係等があり、それは社員にとって当たり前且つ重要な取り決め事ですので、よくよく吟味されたものでなければなりません。よく「好きで選んだ仕事、多少のことは我慢しろ」は、もう今の時代ではパワハラです。会社は、カレンダーに則った就業に十分配慮する義務があり、不当、不正就労とならないよう努めることで、社員のモチベーション維持向上を図る意識を持たなくてはなりません。この極めて当たり前のことを怠ると社員の士気は下がり、離職に繋がるケースも少なくありません。「人を大事にする」は、口だけでなく、制度や規則で明確にした後、キチンと守ろうとする姿勢がとても大事だと思っています。福利厚生や評価、賃金制度は、前述した内容の上に乗せて初めて活きてくるものです。

 「モノ、コトが公正に決定される」も、会社創立期での大事な当たり前インフラを必要とします。取締役会で何を決めるのか、何を諮問、審査するのかを取締役会規定で明確にしておくこと。各組織の上長の権限と責任。また、決定プロセスをルール化した稟議規定。そして、これらのルールを経て決定承認、了解事項となった内容を、対外的、社内限定、起案部署のみというように、開示レベルを決めることでガラス張りの経営を目指すことも大事でしょう。開示することで、多くの審判を仰ぐことが出来ますし、会社としての透明性も担保出来ますので、創立期から心がけるべきと私は思っています。

 「お金が正しく動く」ことは、当たり前中の当たり前なのですが、一番不祥事リスクの高い領域であることは、私自身、身をもって経験していますし、世間を騒がす不正事案の多くは「当たり前に動かなかったお金」に起因していますので、格段のアラート力が必要です。特にプロスポーツ業界は興行を伴いますので、多額の現金が動きます。動く現金が多ければ不正の芽も多いことを、よくよく認識しておかねばなりません。売上の過少申告、支払いの過大申告、安易な社内領収書の承認等々、少しの手間で防げる不正も、アラート力が不足すると大事に至ります。そうした不正を未然に防ぐためにも、クレジットカードやキャッシュレスの推進をすることで現金取扱量を減らしていく努力が重要です。また、社内の会計事務のシステム化とセキュリティアップへの配慮も大事な投資です。経理担当の定期ローテーションもフェイルセーフの観点から必要だと私は思っています。

 会社の基盤作りとして、これまで述べてきたことは、あくまでも「初めの一歩」であり、皆様に私達の事業を通じて喜んで戴く上での、最低限の社内体制作りだと認識しています。こうした内容を対外的に表明すること、ともすれば「それはわざわざ外に言わなくても社内的にやっていればいいでしょ」と思われるかもしれませんが、私はそうではないと思っています。私達の事業活動は、極めて公共性が高く、一般企業では外部に出ないことでも、スポーツメディア等々で配信されることが多く、そこで働く人間は半ば公人としての自覚を持つべきと考えています。公人たる立場にある人間の就労インフラは、広く告知され、その透明性をもって、ガバナンス、コンプライアンス度合を世間から認知戴くことが筋と、私は過去19年に亘る事業活動から学びました。

 今後ベルテックスが健全に浮揚をしていく上で、会社の創立期に「左伴が言ってたことが出来ていて、まあ良かったかな」と回想出来る日が来ればと心より願っています。

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