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食べるの三位一体モデル

皆さんもきっと一度はみたことがあるはず。
3つの輪っかが五輪のマークのように重なり合っている、あの『三位一体』の図。
政治やビジネスモデルにも使われるデザインですが、なぜかそれが頭の中から離れない年末年始を過ごし、自宅に戻って再読しました。
人類学者である中沢新一先生の著書、『三位一体モデル』。

キリスト教における三位一体という教理の詳しい説明は、Wikipedia先生におまかせるするとして。
三位一体をなす「父」「子」「聖霊」をとんでもなく雑に言ってしまうと

・「父(父なる神)」は教えそのもの=普遍のもの。
・「子(神の子イエス)」は伝える人=媒介者。
・「聖霊」は信仰を広める力=躍動し増殖し拡大し伝染していくもの。

本質的には同一で実体は一体である…つまりはみっつでひとつってこと。
この3つのペルソナのバランスが調っているからこそ、人々は信仰により安らかで健やかな毎日をおくることができるというキリスト教の教義、ですよね?(雑過ぎ)

中沢先生は著書の中で、三位一体モデルについてこのようにおっしゃっています。

三位一体モデルとはなにか。
これは、経済や宗教、芸術などをはじめ、現代のさまざまな問題を考えるうえで、いちばん有効で強力な思考モデルのことです。

2020年という稀有な年を終え、新たな年を迎える頃、私は「食べる」と「つくる」についてずっと考えていました。
その思考モデルが、まさにこの三位一体モデルだったのです。
もう14年も!?前の本でしたが、読み直していくうちに、それぞれの輪の輪郭がはっきりしてきました。

私が考えている「食べるの三位一体モデル」は、こんな感じ。

・「父」=普遍のもの=植物を育て動物を狩り大地の恵みに感謝すること
・「子」=媒介者=台所、ご飯を作る人
・「聖霊」=増殖していくもの=食べるという行為、快楽としての食事

このバランスは今、地球全体をみても私達ひとりひとりの中でも、大きく崩れています。
みっつでひとつ。
ひとつがおかしくなったらすべての輪は泡のように消えてしまうのに…。

食べるの三位一体で、「父」の存在は第一次産業。
農業、漁業、畜産業。
第一次産業ではありませんが、流通もその範囲でしょう。
ここがなければ、私達は食べることができません。
コロナ渦での緊急事態宣言中も、毎日畑の様子をみて、海に出て、動物に餌をやっていた人たち。荷物を運び続けてくれた人たち。
彼らがいたからこそ、多くの人がステイホームを余儀なくされても、食料の供給が止まることはなかったんですよね。
普遍的なことは当たり前のこととして、忘れられてしまう。
この輪がどんどん小さくなっていっていることに気づいていますか?

食べるの三位一体で、「子」の存在は台所にたつ人。
料理をする人です。飲食業の人ももちろんそうですが、ここでは特におうちの台所で日々のごはんをつくる人。
コロナ渦の中、自炊をする人も増えましたね。
つくる楽しさを覚えた人もいれば、ただただ辛かった人もいると思います。
手間をかけないとご飯は食べられません。手をかけ時間をかけないとね。
そして「父」がいないと「子」もいないように、素材がないとごはんをつくることはできません。
一次産業に関わる方たちへの感謝が自ずと湧いてくるんです、ご飯をつくることで。
でもこの輪もどんどん小さくなってきています。

食べるの三位一体で、「聖霊」の存在は食べるという行為。
みっつの輪のなかで、ここだけがずっと増殖し続けています。
私達はあまりにも食べることをぞんざいに扱い、無尽蔵に搾取し続けています。
ここだけが大きくなり、他の2つを飲み込んでしまいそうなくらい。
けれど飲み込んでしまったその時、この輪は消えてしまいます。
増殖し続けるこの輪こそが、一番脆く不安定な要素なのです。

食べるには、育てるもつくるも本来は含まれているものです。
みっつでひとつ。
なのにそれぞれの輪が重なりが見えなくなるほどに、食べるの三位一体モデルは崩れてしまっています。

でも、その事に気づいて動き出している人たちも大勢います。

2020年の大晦日。
隣の畑で栽培している野菜や加工品に加え、年末はお餅やおせちをも販売している店での仕事はそれはもう大忙しでした。
閉店後のヘトヘトな私達に、社長がかけてくれた言葉が忘れられません。

「食を支える私達は、みんなのインフラとして大切な仕事をしているのだから、この1年頑張った自分を誇りに思ってほしい」

寒い中漁にでている漁師さんや、冷蔵庫とにらめっこしながら台所にたつ人たち、食べるを支える人たちみんなに、伝えたい一言でした。

食べるの三位一体モデル、すべての輪に100%コミットしている人は多くありません。
けれど、私達ひとりひとりがそのバランスを保つことはできます。
まずは、自分のみっつのバランスは今どうなっているのかを観察すること。
関わりの少ない輪は、誰かが支えてくれているという感謝を忘れないこと。
食べるを過剰に大きくしないこと、雑に扱わないこと。

そして私は。
目の前の誰かの三位一体バランスを調えていきます。
もうひとつの輪、一次産業に関わる方たちからもどんどん学んでいきたい。
そしてそれを周りの人たちに伝える、媒介者でありたいと思っています。

オンラインの料理教室も、オフラインのクラスも、食品を販売することも、毎日台所にたってご飯をつくることも、全ては食べるの三位一体。
より多くの人のバランスが調ったら、日本が世界が、変わっていくと思っているから。

2021年もたべるとつくるにフルコミットし続けていきます!



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