人生で出逢えてよかった歌集笹井宏之『えーえんとくちから』（ちくま文庫）

　こんにちは。こちらをお読みくださりありがとうございます。今日は笹井宏之さんの『えーえんとくちから』の本のことをこちらに残します。”あの風”プロジェクトのレッスンで先生がご紹介されていた本の中で一番気になって購入した本です。短歌だけでなく俳句と詩の作品もおさめられています。

えーえんとくちから (ちくま文庫)

レッスンで紹介されたこの短歌を知った時、自分が透明になっていく感覚がありました。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい/笹井宏之『えーえんとくちから』

　泣いているようにも、口からえーえんといっているようにも、口から永遠がとびてでくような、その永遠は今は解けない苦しさのような、いろいろな感情が湧いた短歌でした。

　（歌集『ひとさらい』あとがき）のページに重度の身体性障害で療養されていることをご本人が綴られています。2009年に26歳という若さで生涯を終えられた笹井さんの短歌は透き通っていて1首1首に余韻が残ります。透明な水に雫が落ちて広がっていく波紋をしばらく眺めている、そんな余韻を感じました。１首のページ、２首のページがありますが、その余白がまたじっくりと作品のせかいを潜っていくような美術館で1枚の絵をしばらく眺めていくような感覚です。短歌が好きな人だけでなく言葉が好きな人は心惹かれる1冊なのではないかと思います。短歌というより人生で出逢えてよかったなと思える本です。

　この本自体が好きですが、特に好きな短歌を残しておきます。

拾ったら手紙のようで開いたらあなたのようでもう見れません
ふわふわを、つかんだことのないかなしみの　あれはおそらくしあわせでした
暮れなずむホームをふたりぽろぽろと音符のように歩きましたね
一夜漬けされたあなたの世界史のなかのみじかいみじかい私
風という名前をつけてあげました　それから彼をみないのですが
花束をかかえるように猫を抱くいくさではないものの喩えに
　　　　　　　　　　　　笹井宏之『えーえんとくちから』（ちくま文庫）

　心穏やかになれない時も時ときにはあるのだけれども、その時に本棚から笹井宏之さんの『えーえんとくちから』選んで読んでいると安らで静寂な気持ちになります。あとこの本を読むと雑に生きないように1日を大切にしたいという感情が湧きます。「今日という日が誰かの生きたかった1日なのであえば辛くても生きたい」と笹井さんの言葉に私は力をいただいているように気がしています。まだ、『えーえんとくちから』しか読んでいないので『ひとさらい』『てんとろり 』『八月のフルート奏者』を読んでみたいです。

それでは。また。