vol.3 おいしいを受けとめよう【朝にぴったり サラダチキンおにぎり】
やめようと決めました。
“ながら食べ”というものを。YouTubeを観ながら、雑誌を読みながら、仕事をしながら、はたまた答えが出ない考えごとをグルグルと頭の中に巡らせながら。
特に朝食の時間は、今日一日であれもこれもやりたいという気持ちから、つい食べながら他の事柄にも手をつけてしまいがちです。気がつけばお皿はカラになっているし、お腹は満たしても心まで満たす実感はありません。
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もともとマルチタスク(複数のタスクを同時にこなすこと)が脳に負担をかけ、結果的に効率を下げてしまうリスクがあることは承知していたんです。でも、現代人にマルチタスクを辞めるなんて無理でしょ…と決めつけて、あきらめていました。
だって、朝ごはんを食べながらも今夜のおかずを考えておかないと、子の送迎ついでに食材を買い出しに行くかどうかが判断できないし、同時に今日の仕事をどの順番でこなすのかもあらかじめ段取りしておきたい。さらにはお気に入りのYouTubeチャンネルで昨夜更新されたはずの新しい動画を、この時間内に観ておかなければ…etc
なんだか朝から頭がいっぱいで、キャパが狭いわたしなどは、すでにもうオーバーヒート気味です。それで肝心の“朝食を食べる行為”からは、満足感を得られたのでしょうか…?
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ある日、定期検診で訪れた病院の待合所。順天堂大学医学部教授・小林弘幸さんの書籍『整える習慣』(日経ビジネス人文庫)を読んでいました。
そこには外科医も実践しているという「集中力トレーニング」についてのページがあります。書籍によると、集中力を身につける習慣として、「今、行っている動作を意識する」ことがおすすめなのだそう。食事のときも「今、ニンジンを食べている」と、意識してみましょうと書かれていました。
なるほど。騙されたと思って、一度やってみようか。
病院終わりに野菜が何種類も入ったサンドイッチを買って帰りました。ひとり家で食べるごはん。いつもなら、バソコン画面をのぞきながらのごはん。
今回は、食べることに集中すると決めたのです。パソコンを閉じ、スマホをしまい、机の上にはサンドイッチと飲みものだけを用意。いざ!
頭の中もなるべくからっぽにして、このサンドイッチに意識を向けてみる。最初はうまくできません。雑念が次から次へと湧いてきます。集中、集中。
しばらくすると、だんだんコツが掴めてきました。胃袋も脳内もサンドイッチで満たされてきます。
「あれ?この食感なんだろう?」
「レンコンを入れるとこんな味になるんだ!」
「この組み合わせ、今度マネしてみよう」
「このお店のサンドイッチってこんなおいしかったっけ?」
なんだか楽しくなってきました。いつもの食べ方だと気がつかないような発見もあります。
今わたし、サンドイッチひとつでめちゃくちゃ幸せになっている。
食べ終わる頃には、しっかりと手を合わせて、心からの「ごちそうさま」を言いたい気分に。
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そういえば、ホテルの朝食っておいしいですよね。もちろん、食材にもレシピにもこだわって、シェフが心を込めて作ってくれた特別なメニューだから、というのもあると思います。
でも、思いました。「おいしく味わうぞ−」というこちらのモチベーションも関係するのでは、と。
ゆったりした空間でいただく朝食。「ここのオムレツはどんな味かな?」「自家製ジャムを塗ってみたパンはどうだろう?」ワクワクしながら“食べる行為”に集中するひととき。
そうやって丁寧に楽しむ食事と、動画を観ながら・別のことを考えながら流し込まれた食事の、待遇の違い。大違い。
我が家の朝食に、今までごめん、と言いたくなりました。
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きっと食事は、作る側だけじゃなくて、食べる側のコンディションも影響するもの。毎朝の食事を無意識のルーティーンにしたり、当たり前のことに思ってしまったりせずに、大切に味わおう。
ときには時間がなくてキッチンで立ちながら食べる朝食があっても、その時間は頭の中を無にして、食べることに集中しようと思います。そのほうが朝食をおいしく味わえるし、次の行動への活力にもなると思うから。
- ONIGIRI recipe -
コンビニで買えるサラダチキンで作るカンタン&ヘルシーなおにぎり。片手でぱくっとタンパク質がとれるし、梅の酸味とバジルの風味がさっぱりとしていて、朝に嬉しい。