vol.1 記憶に刻まれるごはん 【ひと手間で美味しい おかかおにぎり】
家族でのおでかけには、いつも母が握ったおにぎりが一緒でした。
近所の里山にふらりと遊びに行く際も、たまの家族旅行にも、出発の前には必ず、台所でいそいそとおにぎりを握る母の姿があったことを思い出します。ラップで包んで、ころんころんと袋に入れられたシンプルな塩むすび。おかかや梅干し入り、海苔を巻いたものやふりかけを振ったものも少し。
遊びの途中やドライブの休憩に、ぱくぱくと塩むすびをほおばる若かりし日の父も光景の中にいて。今もなお、おにぎりを作ったり食べたりしていると、そんな瞬間がふわりとよみがえってくるのです。
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過去に食べたおにぎりを思い出してみると、脳内には味そのものの記憶だけでなく、握った人のあたたかさや、食べているときの心情、さらにはその瞬間をまるっと包み込んでいた空気感まで一緒に広がります。
以前、WEBメディアでインタビューをしていただいた際に、「おにぎりって記憶に残るものだと思う」と答えたことがあるのですが、言葉にしながら、おにぎりを食べたり作ったりしたシーンを追想してあたたかい気持ちになりました。
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特別な具材でなくていい。不器用でもいい。それもまた、大切な思い出として心に刻まれていくものだから。
食べるひとのお腹が満たされますように。
もちろん“食べるひと”は、自分自身でも良いと思うのです。自分を含め、誰かを大切に思う気持ちがあれば、それはもう、贅沢な、特別な、ほかにはないおにぎり。料理に苦手意識があるわたしも、おにぎりを握るときは少し自信が持てる気がしています。
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- ONIGIRI recipe -
めんつゆで優しい味に仕上げたおかかと、広島菜ふりかけ“三島のひろし”を混ぜただけのシンプルなおにぎり。気取らないレシピが、ありふれた、でもかけがえのない日常にマッチしてくれます。