20250129 施術
このところの体調不良から、大分回復した後でも、少し不安が多くなっていた、一緒に暮らす小さい人。
一度身体も心も区切りがつくように、循環させてあげられたら、と思って出産を契機にクローズしている「治療室」を一日限定で開く。
仕事場だった治療院を参考にしつつも、患者さんが少しでも気持ちがほぐれるようにと、自宅の一室でオープンするときに、選んで選んで選んだものたちを配置していく。
香りも、音楽も、今の彼にはこれかな、と思えるものをセレクト。
準備をしている時から、懐かしくてしょうがなかった。
そう、来る方のことを考えながら空間と自分を整えていくこの静かな時間も好きだった。
かつての患者さんと同じように名前を読んで部屋へ案内する。
ほんの少しの緊張と、嬉しそうな顔。
ゆっくりと静かに始める施術。
いつも、ふわっとその人の心が開く瞬間が訪れる。
部屋の空気も変わる。
この瞬間が本当に本当に好きだった。
そうか、いつもリビングや寝室では簡単な施術はしてあげているけど、特別に、その人のためだけに整えた空間で、集中して、その人だけと向き合う施術は、全然違うんだ、と気づく。
そして、起きている間はずっと話続けているのでは?と思えるほど、難しい知識(心の中で、彼のことを時々「教授」と呼んでいる)や、発見や、面白いことや、不安なことなど常にアウトプットしている彼が、波がひいていくように、しずかにしずかになった。
眠りにつく患者さんもたくさんいたけど、眠らず、ただ、静かに施術を受けていた。
こういう時間がもててよかった。
一日限定なんて言わず、気負わず、大切な人たちが必要としている時にはいつだってオープンしたらいいのかもしれない。
もともとこの施術を学んだのは大切な人たちに行えるように、と思ったのがきっかけだった。
そして、手を使うもので、おばあちゃんになっても続けられる、自分自身が本当にいいなと思える仕事を、というのも大きな理由だった。
嬉しいことに私の大切に思う人たちは、私の手技、施術を好きでいてくれて、いつでも受けたい、と言ってくれている。
かつてのような形できっちり営業できるまではクローズしておこう、と思っていたけど、そんなにかっちりしなくてもいいんだ、と腑に落ちた。
「できる時にできることを」
今日、彼はいつものきらきらした笑顔が戻っていた。
家の前で霜柱を一緒に踏んだあと、一人で行くよ!と元気に登校した彼を見送りながらそう思った。