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【くら詩note】透明

【透明】

いるのかいないのか
ときどき人に
よくわからないと言われます

ときどき透明が怖くなります
交差点を渡る人ごみに紛れて
私はどこかに
いなくなるような気がします

いるのかいないのか
わからない透明に
飲まれてしまいそうで
ついつい確かめるように
歩道に力をいれて
コッツコッツと歩いてしまいます

渋滞のクラクションが響きます
さっきまでうつくしい円形だった
見事な夕日さえ
ほろりほろりと
明日に消えてゆきます
とっぷりとっぷりと
今日は透明になってゆきます

生きている日々の中で
私が自然な透明になるには
何色になればいいのでしょう

あか
あお
きいろ
信号は繰り返し点灯しています

夕映えに進んでゆくような
オフィスもショップも
薄明かりの影をゆるやかに裂く
斜め朱色の夕日に染められて
一刻一刻
今日の透明になろうとしています

おそらく存在しているそのものが
一色であるかと告げるように

今日は惜しみなく溶ける朱色に混じって
斜めかげんの透明になることにします

また明日
コッツコッツと音がします

朝日に連れられて歩いてくる
早朝の風に洗われて
よく見慣れた街の透明に紛れてゆきます

よくわからないといわれる私も
生きている誰かとして
コッツコッツと透けてゆきます

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