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尖った小石を懐かしむように(詩/シロクマ文芸部)


過去にあった格段にいいことよりも
過去のよくなかったことに
声をかけてあげたいのです

懐かしいよ
ありがとうって

あの頃のおかげで
ほんの少しだけど
強くなれた気がするって
まっすぐに
伝えられたらさいわいです

時は音をたてずに流れてゆきます
かなしいことは無理に急いで
どこかに捨てに行かなくていいよね

小さな川が透明な海へと続くように
四季の水の流れの中で
尖った小石が
しだいに丸くなってゆくように

ゆっくりとゆっくりと

かなしいことは
捨てるのではなく
少しずつ
水に流せることができたらいいね

現在 過去 未来
3つもある世界
だけどわたしたちが
生きてゆけるのは現在しかありません

時は淡々と流れてゆきます
一秒一秒が過去
そう 次から次へと流れてゆくのです

懐かしいね
懐かしいね
懐かしいねって

そして一秒一秒は
未来にも流れてゆくのです

君の未来のこうふくを願います
たった今がかなしくても
いつかふりかえって
微笑むことができますように

写真にさえ残す気力もなかった
セピア色した時代の
たったひとりの君の胸の孤独に

懐かしいね
懐かしいねって
静かに響いてほしいのです

そして
遠浅でとうめいな
時の海の中で輝いてほしいのです

まあるくまあるく
そっと素手でつつみこむように
尖った小石を懐かしむように


◎シロクマ文芸部お遊び企画(懐かしい)に参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


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