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【ひだまりのハニー】詩/      シロクマ文芸部| ハチミツは

【ひだまりのハニー】

焼きたてのホットケーキの
香りがキッチンから
漂ってきます

何もかも値上げばかりだけど
昨日は特売だったからって
母さんがケーキミックスを
嬉しそうに買ってきたのです

ホットケーキといえば
同時に浮かんでくる
ひだまりのハニー
あまいあまいハチミツの色

そんなハチミツは
僕たち家族にとって
やさしくて特別な
おやつの時間の代名詞でした

いい匂い
今はもういないばあちゃんが
いちばん笑っていました

あれから随分
時間がたったけど
昔とは随分変わって
おやつの種類も増えたけれど

それなのに
随分味気ない乾いた世の中に
なってしまった気がして
時々さみしくなってしまうけれど

人の不幸は蜜の味なんて
地をゆく人に絡まれて
途方にくれてしまう日もあるけれど

ふと思い出して
無性に口にしたくなるものは
この先も変わらないでしょう

僕たちのあまい思い出を
運んでくれる透明な
蜂の時間の羽音に触れたい

ああ、思い出よ
いつの日もあなたは
僕たちの味方でいてくれます

ハチミツ色の思い出が
ホットケーキをのせた
白いお皿にまで溢れてゆきます

あの頃の僕たちもあまい思い出も
これからもどこにいても
ずっとずっととだえない
同じ輪の中で踊る心の友です

あしたもたぶん
目が覚めたら決めごとのように
生きるためのそれぞれの場所に
飛んでゆくのでしょう
けれどゆきすぎは禁物でした

時にはあまいものが必要です
不確かに見えて
実はそうでもない
やわらかなものが常に
生きるための僕たちには必要でした


※シロクマ文芸部お遊び企画/「ハチミツは」に
参加させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。




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