旧開智学校 耐震工事見学会
10月2日に旧開智学校の耐震工事見学会に参加してきました。
令和元年(2019)に国宝となった旧開智学校は、現在、耐震工事中で建物内の見学ができません。この工事は2年後の令和6年(2024)まで行われる予定で、博物館で一般向けに工事の様子を見学する機会を設けられました。
学芸員さんの案内で、足場やブルーシートがかかった工事中の旧開智学校へ潜入開始!
木と竹で作られた壁の内部構造。向かって右側の壁の中が白くなっていますが、これが補強材。向かって左側は補強前の状態です。
説明によると、旧開智学校の部屋を仕切る壁は、荷重を受ける構造になっておらず、外壁で建物の基本的な荷重を受けるようにできているそうです。
そのおかげで、耐震補強も大変だとか。
これは壁の中の柱なのですが、ほぞ穴は必要があって開いているものではありません。ここにはまる相手がないんです。
実はこの穴、もともと開いていた穴なんです。
というのも、旧開智学校を建てる時に、廃寺となったお寺の柱を再利用されたからです。寺で使われていた時には、このほぞ穴に別な柱が継がれていたんでしょう。
背景の黒い部分は耐震補強で入れられたラスカットと言われる構造部材です。
こんな具合だった1Fの廊下が…
天井や壁、床が剥がされてこんな様子(撮影の向きが先の写真と180°違いますが)。
剥がされた天井からは、2Fの床材が見えています。1Fと2Fの間には、構造材の分だけでほとんど隙間がありません。
床下などは、それこそこういう機会にしか見ることができないでしょう。
床下構造部材が丸く加工された礎石に乗っており、補強用の鉄骨が追加されているのが見えます。
壁や床を剥がして初めて分かることも多く、事前に予定してたとおりに補強部材が入れられないケースも多いそうです。
そんなときには、現合(現場合わせ)で修正していて、時間のかかる作業になります。建築ではないですが、現合は経験があるので大変さは分かり過ぎるくらいよく分かります。
普段は見学できないところも見せてもらいました。2Fバルコニーの窓が開けられて、様子がよくわかります。
左右にある青色のレンガの柱、このレンガはフェイクです。蔵造りのなまこ壁の応用で作られたんでしょうか。
元々の木と漆喰で作られた壁に、新たに木枠とボルトで補強されています。
「少しあける」「ラスカットは?」こういう現場感あふれるところは大好きです。
今回の工事で補強される木材には、識別用に上記の焼印が入れられるそうです。
学芸員さんによると、今後も工事の進捗具合によって見学会を開く予定だそうです。
国宝ということで、耐震補強といっても気を使う部分が多いと思われますが、未来に貴重な文化財を残すという重要な仕事だと思います。
この工事中に訪れて、残念ながら館内の見学ができなかった方は、工事後に改めて足を運んでいただきたいです。