天使が本を読むとき
ゆったりとした夜の時間があったら、海外ドラマを観ることがある。
海外ドラマって、どうして犯罪(刑事)ものが多いのだろう?
恋愛ドラマも多いけど、これもあまり好きじゃない。
残虐なシーン、やたらとテンションが高い内容は、リラックスできない。
その点、イギリスのドラマは観ていて安心だし、ユーモアのセンスもいい。
そして、いま注目しているのが、『グッド・オーメンズ』だ。
書店の主人で優しいけど、少し口うるさい天使アジラフェルと、自由気ままに人生を楽しむ悪魔のクロウリーの奇妙な友情を中心にして、天国と地獄の対立とバランスを壮大かつ情感たっぷりに描いている。
その面白さはアマプラで実際に観てもらうとして、ここでは配信されたばかりのシーズン2の最終回でのワンシーンに触れておきたい。
それは、天国を仕切っている大天使メタトロンと天使としての位は低いけど、若く気立ての良い天使ムリエルの会話。
天地創造以来、人間の世界で暮らす天使アジラフェルは古書店を開くほど、本を愛している(悪魔との戦闘で本を武器として投げつけるのに躊躇している)。
でも、人間世界に住んだことのないムリエルにとって、本を読むことは初めての経験だ。そして、その行いが素晴らしいものだということに次第に気づくようになる。
そして、さらにムリエルは次のように言う。
そう。本は「人間っぽい」のだ。
天使や悪魔にとって、本なんてものは、本来ほとんど価値がない。
しかし、アジラフェルら人間の暮らしを知る天使は、読書がもっとも人間らしい行為だということを見抜いているのだ。
そして、本とともにもう一つ「人間っぽい」ものとして示唆されているものがある。
それは「コーヒー」だ。
大天使メタトロンとカフェ店主ニーナの会話から。
考えてみたら、天使や悪魔と違い、人間は「死」を注文することはしないし、そもそもそういう能力はない。考えても仕方ないものだろう。
本とコーヒー、天使からしたら、何て俗っぽいものと思うかも知れない。
でも本とコーヒーは「人間っぽい」からこそ、大切なものなのだ。
「グッド・オーメンズ」は、ハチャメチャなところがあるけど、どうも人間賛歌のような気がしてならない。
本とコーヒー、万歳!