「熱い」和菓子の「匂い」
パンが好きだ。花見シーズン、先日行ったパン屋で「桜パン」(名前は忘れた)を食べた。餡子入りもあったが、餡なしを選んだ。ほのかな桜の葉のかおりがした。
この季節、実家の和菓子屋では桜餅を作る。和菓子はふつう、冷たい状態で売られている。まさか和菓子をレンチンして食べる人はあまりいないだろう。和菓子はまず色を楽しむものだ。香りにしても、桜餅の場合、葉っぱの成分が餡子を包む薄ピンクの皮に移る、その仄かな香りを楽しむのである。それはあくまでも仄かな「香り」なのである。
しかし冷たい和菓子も「作りたて」の瞬間がある。そして、作りたての和菓子は「温かい」(いや熱い!)し、濃厚な「匂い」が立っている。小さい頃、朝起きて階段を降りるとそこはすぐ工場(こうば)で、饅頭を蒸らしている大きなせいろから饅頭の皮の「匂い」がムンムンと立ち込めていたのをよく覚えている。
そんな環境で育ってきたので、熱い和菓子を食べることはふつうだった。もちろん、売り物なので食べてよいとされるのは失敗作の和菓子だし、餡子を包む前のものであることが多い。いびつな形のどら焼きの皮、余った桜餅の皮(餡子をちょっと入れてくれたりもした)などなど。それらは、冷たい和菓子とはまったく違って、蒸され、あるいは焼かれた「熱くて匂い」立つお菓子だった。
でも焼きたてパンの小麦の香ばしさには敵わないかな…。
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