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読書感想文⑯「働きアリに花束を」爪切男

爪切男の本は面白い。なぜかというと爪切男自身が面白い人だから。そんな人が書く私小説が面白くないわけがない。この本は著者が今まで経験したり関わった仕事や人にまつわるエピソードをまとめた一冊である。読んでみると1つのエピソード自体は短いがどれも強烈に面白いし中身が濃い。それはやはり爪切男が面白いことに対して貪欲で変わった人に対しても優しいからだと思う。この本の最初の方で派遣アルバイトの話がありそのバイトがガラスの彫像のミロのヴィーナスを台車に載せエレベーターで会場に運ぶという内容で業者の監督が「割ったら自腹で弁償 1体50万」と脅すのでほとんどのバイトは及び腰になっていた。だが危ない作業ほどテンションが上がる私は、我先にと彫像を運ぶ役に立候補。別に割れたら割れたでいい。ギャンブルで借金を作るより、ガラスの彫像を割って路頭に迷う人生の方が何倍も面白いのだから。と書いてあり衝撃を受けた。上京してお金のない派遣アルバイトの状況でこんな風に思ってる時点でイカれてるがでもそんな奴じゃなきゃ面白い私小説なんて書けないと思う。だから僕は爪切男の本が好きだし爪切男が好きなのだ。


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