海
波の音が聞こえる。飛沫を上げる、波の音。
細かく弾けて、消えゆく音。
海を見ると、いつも懐かしい友人のことを思い出す。
彼女はもうこの世にはいないけれど、
私の中には、きっとまだ生きている。
私が忘れない限りは、きっと生きている。
そう自分に言い聞かせる。
私の声は、彼女には届かない。
彼女の声も、私には届かない。
そんな距離の中で、私は未だに思い出してしまう。
私が今生かされているのは彼女のおかげなんじゃないかと、
たまに、本気で思う。
3.11.のあの震災を乗り越えられず、
復興の過程を眺めながら自らの行く先を選んだ彼女は、
今の私にどんな言葉をかけるだろう。
今の私は、胸を張って彼女に会えるだろうか。
私が笑っていること。私が泣いていること。
私が考えていること。私が生きていること。
そのすべてが私の人生で、その片鱗に出会ってきた人たちがいる。
紛れもなくその一人である彼女に、いつかまた出会えるように。
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