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強制収容所 体験記 

ジェノサイドのおそろしさは、一時に大量の人間が殺戮されることにあるのではない。そのなかに、ひとりひとりの死がないということが、私には恐ろしいのだ。

石原吉郎 望郷と海

強制収容所と言えば、真っ先に浮かぶのがアウシュビッツやシベリアであろうか。実際に収容された人々が残した記録は、極限状態における人間の姿を映し出すとともに、二度とこのような凄惨な歴史を繰り返さないための警鐘でもある。

夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル

 英訳では Man's Search for Meaning となっている。心理学者であるフランクルは、1942年にテレージエンシュタットに収容され、1944年にアウシュビッツへ移送された。母と兄弟を失いながらも過酷な収容所生活を生き抜いた。単なる証言記録に留まらず、心理学や哲学においても重要な位置を占める作品である。

望郷と海 石原吉郎

1945年にハルビンで終戦を迎えた石原はソ連兵の捕虜となり、シベリア抑留を経験した。スターリンの死後、1953年に解放されるが、帰国後もシベリア抑留者という刻印により日本社会では腫物扱いされ、孤立に苦しむ。その葛藤や疎外感が詩的な文章で綴られている。
2013年頃の京都大学の現代文問題として採用された記憶がある。手元にあるのはみすず書房の版だが、現在では絶版状態であり、入手は困難となっている。

収容所群島 アレクサンドル・イサーエヴィチ・ソルジェニーツィン

1945年、スターリン批判により逮捕されたソルジェニーツィンは、モスクワのルビャンカ収容所に送られる。スターリンの死後、北カザフスタンへの流刑を経て、1956年に無罪となるが、1974年には再び弾圧を受け国外追放となる。本書は、ソ連の強制収容所制度を告発する大著であり、ノーベル文学賞受賞作としても知られる。
残念ながら、日本語訳版は現在絶版となっている。手元にあるのはフランス語版 "L'Archipel du Goulag" である。

これが人間か プリーモ・レーヴィ

化学者であるレーヴィは、1943年にイタリアのファシストに捕らえられ、Fossoli収容所へ送られた。その後、ユダヤ人であったため1944年にアウシュビッツへ移送される。本書はアウシュビッツでの体験を克明に記録したものであり、極限状態での人間性や倫理について深く考察している。現在手元にあるのは、フランスで購入した版である。

溺れるものと救われるもの プリーモ・レーヴィ


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