温故知”芯”~へっちゃら解釈~『Impro for Storytellers』≪第６章：⑩Sidetracking（サイドトラッキング）≫
前置き
このブログのタイトルにある「温故知芯」とは、私が大切にしている考え方を表した造語です。先人の知恵や経験を深く理解し、私なりに、その本質を捉えることによって、新たな発見や創造に繋げたい。そんな想いをこの言葉に込めています。
今回は、前回のnote記事（▽こちら）からの派生note記事です。
※「物語を妨げる行動リスト」のひとつを詳細に解説します。
おさらい
このnote記事では『Impro for Storytellers』（Keith Johnstone (著)）
の、第６章 Making Things Happen の解釈について拙筆を走らせます。
この章では、インプロ（即興演劇）における物語の推進力を阻害する様々な行動が挙げられています。
これらの行動を理解し、適切に対処することで、プレイヤーはより効果的に物語を構築し、観客の興味を引きつけ続けることができます。
今回は、以下の行動について、解説します。
Sidetracking（サイドトラッキング）
「Making Things Happen」セクション内の「Sidetracking（サイドトラッキング）」は、即興劇（インプロ）において、物語の展開を意図的に脱線させ、観客の期待を裏切ることで、物語の進行を妨げる行為を指します。このセクションでは、サイドトラッキングがどのように物語の勢いを削ぎ、観客の興味を失わせるかを説明し、それを避けて物語を活性化させる方法を提案しています。
サイドトラッキングに関する主なポイントは以下の通りです。
サイドトラッキングとは：
脱線: 物語の流れを、予期しない方向に意図的にそらすこと。
注意のそらし: 観客の注意を、物語の本筋から外れた、どうでもいいことに向けさせること。
期待の裏切り: 観客が期待している展開を避け、全く別の展開に持っていくこと。
不必要な要素の導入: 物語に、不必要で、脈絡のない要素を持ち込むこと。
責任の回避: 物語を大きく動かすような、変化につながる行動を避けること。
相互作用の回避: 登場人物同士の本質的な感情や関係性を避けてしまうため、物語が深まらない。
サイドトラッキングの具体例：
赤ずきんの例: 赤ずきんが森で狼を見つけた瞬間に、深い穴に落ちてしまう。
狩人の例: 狩人が獲物を追い詰めている時に、ファーストフード店に入ってしまう。
モーセの例: モーセが十戒を読もうとした時に、天使が現れる。
考古学者の例: 考古学者が十戒を発掘し、読もうとした時に、電報が届く。
歯医者の例: 歯医者が巨人の口の中で膿瘍を治療するはずが、詰め物をしてしまう。
召使いの例: 召使いが棺桶に入るように言われた時、「もう一つの棺桶は何ですか？」と質問する。
恋人の例: 恋人とデート中、突然、過去のトラウマについて語り始める。
サイドトラッキングの弊害：
物語の停滞: サイドトラッキングは、物語の展開を妨げ、何も起こらない状態にしてしまう。
観客の混乱: 予期しない展開に、観客は混乱してしまう。
期待の裏切り: 観客が期待していた展開を裏切ってしまうため、興味を失わせてしまう。
創造性の阻害: プレイヤーが、物語の展開よりも奇抜なアイデアに集中してしまうため、新しいアイデアが生まれにくくなる。
笑いの喪失: 脈絡のない展開は、ユーモアを損なう。
物語の焦点の不明確化: 何が重要なのかが曖昧になり、観客の関心を失わせる。
キャラクターの個性の喪失: どのキャラクターも同じように脱線するため、個性が失われる。
サイドトラッキングの修正と活用：
物語への集中: 物語の本筋に集中し、脱線を避ける。
関連性の意識: 物語に登場する要素が、何らかの形で物語に関連しているようにする。
予測可能な展開: 観客が期待する展開を完全に無視するのではなく、ある程度は予測可能な範囲で展開させる。
伏線の活用: サイドトラッキングを伏線として活用し、後で物語に回収する。
例：狩人がファーストフード店で聞いた情報を、後で狩りに活かす。
サスペンスの演出: 核心を隠すために、サイドトラッキングを意図的に使い、観客を惹きつける。
例：重要な情報が、別の出来事に隠されて、観客の好奇心を刺激する。
プラットフォームの活用: サイドトラッキングになりそうな要素を、物語のプラットフォームとして活用する。
例：穴に落ちるという出来事をきっかけに、新たな冒険が始まる。
視点の転換: サイドトラッキングを逆手にとり、物語の視点を変化させる。
例：電報を受け取った人物が、その電報の内容によって全く別の行動を始める。
サイドトラッキングと「Being Original (独創的であること)」の関連性：
サイドトラッキングは、独創的であろうとするあまり、物語の本筋から離れてしまうことによって起こることがある。
独創性: 奇抜なアイデアを追求するよりも、物語の本質的な面白さを追求する方が重要。
サイドトラッキングとブリッジングの違い:
サイドトラッキング: 物語の展開を、予期しない方向に意図的にそらす。
ブリッジング: 物語の展開を、不必要に引き延ばす。
サイドトラッキングと「Looping（ルーピング）」の違い:
サイドトラッキング: 物語の展開を、予期しない方向に意図的にそらす。
ルーピング: 同じ行動やセリフを繰り返すことで、物語の展開を停滞させる。
重要な点として、インプロにおいて「Sidetracking」は、物語の展開を阻害し、観客を混乱させるため、プレイヤーはサイドトラッキングを避け、物語を積極的に展開させ、観客の期待に応えることが重要です。ただし、伏線を張ったり、サスペンスを演出したりするために、意図的に活用することもできるとされています。
また、サイドトラッキングは「物語がうまくいっていない時の逃避行動」であり、「プレイヤーが物語をコントロールできていない」時に起こりやすいと指摘されています。
まとめ
第6章は、インプロ（即興演劇）における物語の推進力を理解するための重要な章です。
これらの行動は、一見すると無害で、またはコメディのために必要不可欠なものに見えるかもしれませんが、実は物語の展開や観客とのつながりを阻害する要因となります。
プレイヤーは、これらの行動を認識し、意識的に避けることによって、より豊かで、刺激的な物語を創り出すことができるでしょう。
また、これらの行動を意図的に利用することで、物語がどうなっていくのかを理解し、自発的に物語を作り上げていく能力を高めることができるでしょう。
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