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インプロ(即興演劇)をする人の多彩な役割
インプロ(即興演劇)は、台本なしでその場で物語を創造していく、スリリングで創造的なパフォーマンスです。
今回の内容は、ある程度インプロをやっていれば、感覚や体感としては納得できることだと思います。
ただし、これを明確に言語化することで意識化されれば、さらにインプロバイザーとしの技量や在り様が向上し、それによって観客に素晴らしいパフォーマンスを見せることができるようにもなります。
また、共演者にとっても良い影響が与えられ、お互いに楽しみながらインプロをしていくことができるようになると思います。
そんなわけで、インプロをより深く理解するために、インプロをする人、つまりインプロバイザーが担う役割について解説していきます。
(この記事では、特に欧米で主に言われている考え方をベースに、私自身の解釈や考え方も含めています)
※この記事は
の以下の記述の詳細な内容となっています。
プレイヤーとキャラクターは、厳密には別人格です。また、プレイヤーはキャラクターを演じながらも、頭のどこかで脚本家(スクリプトライター)や演出家(ディレクター)といった役割を担っているということがあります(この点については、また別の機会に触れたいと思います)。
それではこれから、めくるめく魅惑に満ちた、多彩なインプロの世界の片鱗を探求していきましょう。
インプロをする人を何と呼ぶ?
インプロをする人のことを「インプロバイザー(improviser)」、または「プレイヤー(player)」と呼びます。これは、日本語でいうと「演者」や「役者」に近いかもしれません。さらに、この「プレイヤー」という呼び方には、それ以上の意味が含まれていると私は考えています。
「プレイ(play)」という言葉には、「演じる」という意味だけでなく、「遊ぶ」という意味も含まれています。つまり、インプロのプレイヤーは、遊び心を忘れず、柔軟に、そして創造的に舞台上でパフォーマンスを繰り広げる存在なのです。
私自身はインプロを、自己表現をしながら、他のプレイヤーと遊び合い、相互に影響を与え合う表現形態だと捉えています。
インプロバイザーが担う3つの主要な役割
インプロバイザーは、舞台上で単に役を演じるだけでなく、複数の役割を同時に担っています。ここでは、インプロバイザーが担う3つの主要な役割を解説していきます。
1.登場人物(キャラクター)
インプロバイザーが演じる役柄、それが「登場人物(キャラクター)」です。インプロでは、登場人物はインプロバイザー自身のスタイルや個性、価値観、考え方が反映されることがあります。
特にアメリカのインプロ(主にデル・クローズとそこから発展したインプロを踏襲しているところ)では、登場人物をインプロバイザー自身の反映の要素を多分に使って表現する傾向が強いようです。
ただし、この、その人らしさ、プレイヤー自身の良さや素敵さを表現するという考え方は、アメリカに限ったことではなく、インプロ自身の特長でもあります(そして、それが、ほんのり香る程度のバランスで表現されるとき、インプロはより美しいものになると個人的には考えています)。
この登場人物(キャラクター)という視点を持つことで、インプロは、ただの物語をなぞるのではなく、インプロバイザー自身から湧き出る創造的な表現の場となるのです。
2.脚本家(スクリプトライター)
インプロは台本がないからこそ、脚本家(スクリプトライター)的な視点が重要になってきます。もし、登場人物同士がそれぞれの意図を持って行動しているだけだと、物語が行き詰まってしまうことがあります。
そこで、脚本家のように、シーン全体を俯瞰して、登場人物同士の意図が合致しない場合や、物語が停滞しているときに、「この登場人物は、どのように行動すれば物語が進むのか?」「どのような動機を持って働きかければいいのか?」という視点を持ちます。
この視点があることで、登場人物同士の関係性がよりダイナミックになり、物語はより発展していくのです。
3.演出家(ディレクター)
3つ目の役割は、演出家(ディレクター)です。通常の演劇では、脚本を立体化し、舞台上で具体的な形にする役割を担います。インプロでも同様に、物語を「立ち上がらせる」ためには、演出家的な視点が欠かせません。
この演出家の視点があることで、インプロバイザーは、脚本家が考えた物語の意図をどのように表現するかを考えることができます。
インプロバイザーは、それぞれの意図を、表情、身振り手振り、セリフ、舞台上の動きや位置取り、などを通して、具体的な形にしていきます。このプロセスもインプロの創造性の源泉を担っています。
3つの役割はグラデーション
これらの3つの役割は、それぞれが独立するのではなく、同時に存在し、グラデーションのように重なり合っています。
ある瞬間には登場人物(キャラクター)の要素が強く現れ、別の瞬間には脚本家(スクリプトライター)や演出家(ディレクター)の視点が強くなるなど、状況に応じて変化します。
インプロバイザーは、この3つの役割を、状況に応じて適切に切り替え、そのバランスを調整しながら、即興の物語を紡ぎ上げていきます。
補足情報:その他の役割
さらに、インプロの中では、以下の役割を担うこともあります。
音声(サウンドエフェクト、SE)
舞台上で音を発したり、舞台袖から効果音を出すことで、物語を盛り上げる役割。
例えば、雷の音であれば「ゴロゴロピシャーン」という音であったり、ざわついた雰囲気であれば「ザワザワザワザワ」という音であったり、泥沼などの重苦しい雰囲気であれば「ドロドロドロドロ」という音であったり、雰囲気や状況を表すような効果音を表現します。
小道具・大道具
舞台上の小道具や大道具として存在することで、舞台に立体感と奥行きを生み出す役割。
小道具は、時に登場人物(キャラクター)を象徴する役割を担うこともあるでしょう。
例えば、舞台上に椅子がなければ、インプロバイザー自身が椅子になったり、木を演じたりすることもあります。
その他、何かを覆うマントや、何か特定のものを表現するための衣服などの外形的なものも小道具に含まれるでしょう。
ケンタウロスのような下半身を表現するために、別のインプロバイザーが馬のように振る舞うこともあります。
※この他にも様々な役割があるかもしれません。もし、あなたが思いつく役割があれば、ぜひ考えてみてください。
これらの要素は、インプロの表現をより豊かにし、多種多様な表現を生み出す上で重要な役割を担っています。
インプロバイザーの成長と3つの役割
すべてのインプロバイザーが、これらの3つの要素を常に適切に使い分けているわけではありません。
しかし、インプロというものが熟達してくるにつれて、インプロバイザーの能力や経験が向上し、より熟練したインプロバイザーになってくるほど、これらの役割の使い分けが上手になり、適切な割合で3つの役割を駆使できるようになります。
これらの役割をうまく使いこなせるようになってくると、インプロバイザーとしての成長が見られると言えるでしょう。
また、その人らしさ、愛おしさというものは、表現しようと意識して出すものではなく、むしろ、あえて表現しようと意図しないからこそ、ふと出てくるものなのでしょう。
それくらいのニュアンスで表現されると、インプロはより美しいものになると考えています。
逆に、そこを前面に出そうとすると、表現形態として、あまり美しくないものになってしまうと感じています。
まとめ
インプロバイザーは、舞台上で様々な役割を担いながら、インプロという表現を紡いでいきます。
そしてインプロバイザーはプレイヤーとも呼ばれ、それには「遊ぶ人」という意味も含まれるので、ぜひ、遊びながら、楽しみながら、こうした役割や技能を身につけていって欲しいと考えています。
この記事を通じて、インプロの面白さや奥深さを少しでも感じていただければ幸いです。
もし、あなたがインプロを体験する機会があれば、ぜひ今回の内容を参考に、より深くインプロを楽しんでみてください。