自然葬は”火葬ビジネス”に一石を投じるのか…
火葬場を運営する事業主体が“公益事業”を謳いながら明らかな商売(ビジネス)をしている現状を憂える記事だと、私には見受けられた。
こう書くと自己矛盾を露呈することになるのだが、しっかりと現実を受け止めなければならない。
「現在全国の墓地で最も多く見かける、墓石の下に骨つぼをおさめる区画(カロート)があり、『○○家(先祖代々)之墓』などと刻まれた型式の墓が全国に広がっていったきっかけは、この9月1日で発生百年を迎える関東大震災だった。」(日本経済新聞、Nikkei The Style、2023年8月13日)
100年という時間軸を長く捉えるか、それとも短く捉えるかによって、この記事の本質がずれてしまうのだが。
もちろんこの記事は後者であることは言うまでもない。
あたかも、日本の古くからの伝統とか風習などと思い込んでいる現在の葬送文化は、ついこの間習俗化されたものであるといっても過言ではない。
この近代的で合理化された葬儀の形は非常にもろく、実はとても薄っぺらいものなのかもしれない。
実際に私が勤める火葬場でも、全体の2~4%の葬家が部分収骨(お骨を一部だけ骨つぼに収骨し、残りは火葬場で供養すること。主に関西以西、九州におよぶ地域の特性(墓事情)として挙げられるが、お墓をもたない手元供養のために部分収骨を希望する傾向は地域にかかわらず見受けられる。代表的なのは、のど仏のみ部分収骨するスタイルである。)を希望しており、お骨に対する意識の変化が断片的ではあるが見て取れる。
また、粉骨の需要が徐々に増えていることについても言及しておきたい。
話は飛ぶが、引き取り手のいない遺骨の扱いに関しては、ここ数年徐々に社会問題化しているように思う。
核家族化から共働き世帯へ、そして未婚化が進むにつれ、特に都市部では今後ますます墓の在り方が変容し、遺骨に対する考え方、価値観が大きく変化するだろう。
さて、リンクの記事では、いわゆる「土葬」について書かれたものである。
『自然に還る』
といえば聞こえはよいが、遺体を取り巻く衛生上の問題、葬送ビジネスに関わるものの既得権、現代日本人の宗教観などを考えると、この先数年単位では、大きなパラダイムシフトが起こることは考えにくい。
しかし、我々のような業界人は、常にこの問題に対峙していかなければならないと思う。
土葬だけではなく、近年アメリカでは「アクアメーション」と呼ばれる遺体を液体よって溶かす葬送方法や、遺体を堆肥化するものまで合法化しているという。
海洋散骨や樹木葬など『自然葬』とカテゴライズされる葬送方法は、火葬を前提に成り立つものであるから、我々の”ビジネス”とは親和性が高い。
しかし、これらの前提を覆すような葬送方法が、多様性を是とするこの現代社会において議論されることになれば、当然ビジネスか、文化か、のような二元論に陥る可能性が高い。
そんなとき、私たちがきちんと私たちの仕事の社会的役割を社会に対して発信することができるかどうか。
今まさに真価が問われている。
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