イッキューパイセン #5
「どうしたいんだよ」
「その小せえ脳みそで考えろや」
寺子屋の外でケンドー防具教師とパツキンピアス生徒が激しい口論をしている。
生徒のしているピアスを巡ってのものらしい。
「何がしたいんだ」
「考えろっつってんだよ その小さい脳みそでよォ」
ナムサン!彼には『考えろ』と『脳みそ』以外の語彙が存在しないのか!
その乏しい語彙でしつこく教師を挑発し続けていたそのときだ!
SMASHHHHH!
教師の右ストレートが生徒の顔面に炸裂!生徒ダウン!
「誰に向かって口利いてんだコラァ!」
ダウンした生徒の胸倉を掴んで罵声を浴びせる!
生徒はダウンしながらも冷静に路地裏を見やる。
そこには仲間2人が教師の暴行を詳細に記録すべく半紙と筆を手に待機していたのではないか!
このままでは教師は社会的に抹殺されてしまう!
「テメェ生徒に手ぇ出してもいいのかよ!」
一方的にやられたのではリアリティが薄い。
ピアス生徒が教師を引き剥がそうと体に手を伸ばす!
ビキィィッ!!
おお、伸ばした右手が当たったケンドー防具の胴体に小さなヒビ割れが生じたではないか!なんたるピアス生徒の掌底破壊力か!
しかし当の生徒は何か妙な手応えを感じていた。
その理由はすぐに明らかとなる。
「ピアス君、覆面レスラーがメインのマスクの上に被るオーバーマスクをご存じかな」
ひび割れに動じることなくケンドー教師は問いかける。
「ど、どういう意味だ!?」 生徒狼狽!
ひび割れが徐々に大きく広くなってゆく!
「俺はメインの体(ボディ)の上に」
ひび割れが全身を覆いケンドー防具が粉々に破散する!
「オーバー体(ボディ)というのを着ているのだ」
そこに現れたのは一人の屈強な僧侶!
「ゲェー! イッキュー!」
おお見よ!ケンドー教師ビッグ・ザ・武道の正体はイッキューパイセンだったのだ!
僧侶であるならば教師ではない、教師でないならばいくら生徒に手を出そうと自由だ!なんたる完全無欠な論破不可能理論か!
「イヤーッ!」痛烈な右ストレート!「グワーッ!」
「イヤーッ!」強烈な左フック!「グワーッ!」
「イヤーッ!」苛烈なヘッドバット!「グワーッ!」
「おいてめぇ何してんだやめろ!」仲間が止めに入る!
「イヤーッ!」数珠を振り回し眼球に叩きつける!「グワーッ!」
「イヤーッ!」数珠を振り回し睾丸に叩きつける!「グワーーッ!!!」
仲間2名沈黙!戦闘不能!休む間もなくピアス生徒へ追撃!
「イヤーッ!」「グワーッ!」
こうして寺子屋はすくわれた。
『生徒は成長の遅い植物である。それが成人という名に値する以前に、それは幾度か困難の打撃を受けて耐えなければならぬ。』
――ジョージ・ワシントン
パイセンは身を以って教育の在り方を示したのであった。
【おわり】