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音楽はなぜリズミカルなのか?

リズムは音楽に欠かせないものです。リズムのない音楽、というのはほとんど考えられないのではないでしょうか?しかし、ではリズムとは何か、と聞かれるとすぐに答えるのは困難です。ジャズのリズムとか、ワルツのリズムなどというものは、リズムの1例でしかないでしょう。なにか、リズムとはこれだ、と一言で言えるような考え方はないものでしょうか?

そこで、音楽のリズムの由来を考えてみることにしましょう。

階段はなぜ規則的なのか?

音楽のリズムの由来を考えるために、階段がどうして規則的に作られているのかが参考になります。

コンクリートや木材が勝手に規則的になるわけではありません。よく考えてみると、大工さんや職人さん達がそのように作ったとしか言いようがありません。ではなぜ彼らは階段を規則的に作るのでしょうか?

不規則な階段を想像してみればその意味が分かるでしょう。寂れた神社で石がズレてしまった不規則な階段を登ったことがありますが、一歩ごとに距離を測る必要があり、さらに段が水平ではないので、体を支えるための角度も考えなくてはなりません。通常の何倍も疲れる経験でした。

ガタガタ石段

規則的な階段は登りやすいのです。ではなぜ登りやすいのでしょうか?それは、同じことを繰り返すだけで済むからです。一歩ずつ登ったり降りたりするそのサイクルが、全く同じように繰り返されるのですから、一度階段のサイズを知ってしまえば目をつぶっても上り下りすることができます。階段が規則的なのは木材や石などの素材の性質によるのではないのです。人間の歩行能力に合わせて、歩きやすいように規則的に作られているのです。つまり、階段の規則性とは、人間の歩行能力の模倣であると言ってもいいでしょう。よく模倣されているほど、その階段は登りやすいことになります。

音楽のリズムとは人間の音楽理解能力の模倣である

音楽がリズミカルである理由も同じなのではないでしょうか。ビートや小節を元にした音楽は、同じ枠組みを繰り返し使って理解することができます。

つまり、音楽がリズミカルであるのは音の性質によるのではありません。人間が音楽を理解する能力が規則的であることを要求するので、作曲家や演奏家は音を規則的に配置するのです。つまり、音楽に現れるリズムとは、人間の音楽理解能力の模倣です。

音楽は聴き手と作り手の共同作業の結果として、特定の形態を取るようになると言えるでしょう。その時、音の配置が示す傾向は、作曲家と聴衆のコミュニケーションの痕跡なのです。

もちろん、人間の音楽理解能力の限界に挑戦したり、新たな可能性を追求するような作品も存在しています。そのうちのあるものは音楽の日常的なあり方に取り込まれて行くかもしれませんし、あるものは音楽の特殊なあり方にとどまるかもしれません。またあるものは、ジャズのリズムであるとか、民族独自のリズムなどといった形で、特定のグループによって文化的に維持されることになります。

絵画なども、人間の理解能力の模倣として捉えられるかもしれません。様々な富士山の絵がありますが、これらは現実の富士山の模倣と言うよりも、我々の富士山の理解能力の模倣なのではないでしょうか?そう考えれば十人十色の富士山が存在する理由も納得ができます。

カテゴリー:音楽理論

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