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売れる本ってどんな本?

こんにちは。お久しぶりです。
基本的にこのnoteは日々の業務からの学びや、不満などを吐き出すものですから、投稿は不定期です。

そしてまた、このnoteは出版業界で働く上での気づき、できないこと難しいことへの不満を吐き出して消化(昇華)しようというものですから、表題への答えが出るわけではありませんし(この前置きはそろそろしつこいか?)、正しいとも思っていません。個人の感想です。

そして多分、多くの方からしたらめちゃくちゃ当たり前のことも書くと思います。ですが私は新人なのです。毎日が学びなのです。学びだと思っていなければどんなに好きな仕事でもやってられないのです。すぐに大学生の頃の生活習慣に戻りたくなるのです。
そんなウブな心で出版業界、本界隈を見つめる視点をどうぞお楽しみください。


それでは本題です。


はじめに

先日、お客様に直接本を売る機会がありました。押し付けて売るというものではなく、お客様が選んだものを私が会計するということです。
書店研修などではなく、イベントですね。

私には、編集者になって企画を考えるにあたってずーーーーーーーっと考えていることがあります。

それが、売れる本ってどんな本だろう?ということです。

今回、目の前でお客様が本を手に取り、買うか買わないか相談をし、購入を決めたり、逆に買わない選択をしたり、そもそも全く手に取られない本もあり、逆に補充すれどもすれどもすぐに買われる商品もあり、
弊社の数々の商品を捌いているときにも同様の疑問が常に頭の中をぐるぐると渦巻いていました。

売れる本ってどんな本だろう?



弊社の商品の特性

結論から言えば、今回の機会における弊社の商品の売れ行きからはどんな本が売れるのか、という答えは出ていません。

というのも、弊社の商品は数々の出版社のように、バンバンと目新しい本を作り出し、新たな価値(?)を市場に投入するような商品ではないからです。
どちらかというと、「お客様に愛され続けてNo.1」みたいなCMを打つ方に近い部類です。常にそこそこファンがいて一定数売り上げが立つ、という仕組みのものが多いのです。あくまで多い。全てではないです。

ですから、今回売れようが売れなかろうが、本自体が売れないものである、というよりかは、今回たまたま売れなかった(勿論企画自体が全然ウケていない可能性もめっちゃある)のであっていつかは売れる。
まあそんな呑気な感じなのです。入社半年で勝手に言っているだけですが。


それでも売れる方法はある。
面陳こそ正義。

そんな弊社商品でも、今回のイベントで売れ行きが良かったパターンがあります。
こんな企画はよく売れたよ!ということではなく、パターンの話です。

今から驚くくらい普通のことを言います。誰もが「当たり前だ!!」と見開きのルフィみたいに濃い線で叫ぶような普通のことを言います。

面陳はめっちゃ売れる。

はい。面陳めっちゃ売れます。
面陳というのは、書店で表紙が見えるように置かれている感じのやつです(たぶん)。ノリで業界人っぽく「面陳」と言っているだけで、使い方間違っていたらすみません。
表紙が見えるように置く、これが良く売れる秘訣だということです。

書店営業的にはたぶん超々当たり前のことすぎて、自信満々に報告したら目ん玉ひん剥いてぶん殴ってきそうですよね。
でも本当に面陳は良く売れる。

売れる以前に、いろんな人に見てもらえる。これがかなりでかい。

恋愛とかでも「単純接触効果」といいますが(これもノリで使ってるので使い方合ってるかわかりません)(専門用語っぽいのは全部ノリで使ってるので間違ってたらすみません)、本にもそんなものがあると思います。

表紙を見てもらって、一瞬でも目に止まって、一瞬でも手を伸ばそうと思わせたら我々の勝ち。
結果的に買われなくても、興味を持たせることが第一なのです。

そしてやはり背表紙じゃ本の魅力はなかなか伝わりづらい。基本味気ないスタイルのタイトルと著者名だけですし、よほどタイトルが天才的か、著者が超人気者でない限り、本を買うためにじっくり棚を見ている人以外は気に留めてくれないでしょう。

興味なかった人にも興味を持たせる。それが面陳なのです。
単純に見てもらう、知ってもらう、そして興味を持ってもらうことが購入の第一歩二歩ですからね。
表紙とタイトルはおそらく1番編集者が力を入れるところです。本の売れ行きがかかっていると言っても過言ではない(私調べ)。
だからとにかく面陳で本を見てもらうことが正義なのです。

ちなみに、今回のイベントでは、試しに面陳してみたものは軒並み売れました(ご購入いただけました)。
普段見向きもしないようなものでも、意外な出会いがあるかもしれない。やはり面陳は正義です。

面陳さん万歳。
各社の書店営業の皆様の棚を死守する努力には脱帽です。



売れる本の特徴①〜タイトル『人生○○が☆割』〜

イベントを経たり、自分の今までの購入履歴を思い返したり、色々考えた上で、売れる本の特徴が二つあります。

個人の好悪、企画の良し悪し、ページ数・判型などなど、考慮すべきことはたくさんあるかもしれませんが、売れている本(創作以外)で共通する普遍的な特徴です。私が勝手に言っているだけです。

でも、誰に言っても「まだそんなことを言っているのか!」と目ん玉ひん剥いてぶん殴ってきそうなほど、当たり前のことを言います。


さて、そんな売れる本の特徴は二つあります。

一つ目が、タイトルがいい、ということ。

ふざけんなって感じですよね。当たり前すぎますよね。
実用書とかのタイトルって誰が考えてるんですかね。たぶん編集者ですよね。いや〜実に多彩で面白い。

1番お気に入りのタイトルは『人生○○が☆割』みたいなやつ。別に人生じゃなくてもいいんですが。

私の記憶では、あれは7,8割から始まって、一気に拡大した後、後々9割が出てきて、つい最近遂に10割が出ちゃいましたよね。

10割出しちゃったか〜という残念な感じはあります。
だってそれが「全てだ」というのは、超刺激的ですよね。それ以外を全て否定することにも繋がりかねないわけですから。
10割が出ちゃったらもう終わりですよ。それが全てなんですから。10割が出たからには他の弱い割合なんて出してもね……という感じですし。
お互いに10割は出さずに9割で抑えておこう、みたいな風潮もあったのではないでしょうか。

あと10割って明らか嘘ですよね。な訳ない。
センター試験の国語でも、テクニックとして選択肢に「全て」と入っていたら解答候補から除外みたいなの考え方があります。そのくらい常識的に考えて10割はない。
どんなに強気なテレビCMだって、洗剤系のCMは必ず少し汚れが残っている。「全て(10割)」効果を発揮するとは言えないのでしょう。例外は必ずあるから。
10割といってしまったからには例外が出た場合謝罪が必要ではないか。そんなことを考えてしまいます。
本において誤謬は仕方ない気はしますが、タイトルで10割と謳っている以上それは許されない。例外はないとタイトルで言ってしまっているから。そのくらい強い覚悟があってのタイトルなのでしょうか。
まあ扱っている内容的になんとでも言い逃れできるのかもしれませんが。

いずれにせよ、10割が出たら、もうこの☆割時代は終わりですかね。
逆に1割とか、低い割合のやつはまだブルーオーシャンかもしれませんが。

というように、書店でぶらぶらと歩いていて、全く興味ないのにタイトルを見てしまう瞬間が誰にでもあると思います。
そのくらいタイトルは重要。そして著者が考えない場合、1番編集者のセンスが問われる。非常に恐ろしいものなのです。

タイトルさえ良ければ売れる、とまで私は考えています。
多分考えていることが甘すぎて怒られます。

でも消費者的な立場からいったら、そのくらい単純に簡単に本を見ている。少なくとも私は。
暇つぶしに本を読んでいる身からすれば、面白そうであれば買っちゃうのです。

だから私は刺激的な、煽るようなタイトルはいいと思います。中には下品だといって嫌う人もいるでしょうが、上品なタイトルつけてカッコつけたって売れなきゃ意味がないんです。
私みたいなのはタイトルに「バカ」とかついてたらすぐ気になってしまいますね。

まあここら辺は好みだと思いますが、とにかくタイトルは非常に重要だろうと、日々感じます。

ちなみに『人生○○が☆割』系の本は、一冊も読んだことはありません。タイトルに興味が湧くだけで、残念ながら中身に興味が湧いたことはありませんでした。
タイトルで中身がわかり過ぎてしまうのは良くないかもしれませんね。「はいはい、○○が☆割なのね」で終わりですから。



売れる本の特徴②〜表紙〜

売れる本の特徴二つ目。
表紙がいいこと。

当たり前すぎてびっくりです。

上で面陳こそ正義、と書きましたが、面陳されても表紙がつまんなそーだったら興味が湧きません。

人は見た目が6割的な本は絶対あると思いますが、本は見た目が9割、これは絶対言えると思います(あんなに批判した手前10割とはとても言えない)。

あくまで、タイトルと表紙のコンビネーションですけどね。
ゴリゴリにイカつい社会問題を扱っているようなタイトルで、アニメのような美少女キャラが表紙だったら意味わかんないですからね(意味わかんなすぎて逆に買うか?)。

難しそうな内容を柔らかい絵のもので表現してハードルを下げるというのも一つの手だし、逆にイメージ通り硬派な感じを出してカッコ良さを演出するのもありだし。
基本的に新書と実用書(教養書?)しか読まない私ですが、実用書に関しては、本当に手に取りやすいタイトルと表紙だなぁと、生意気ながら感心してしまいます。

表紙って、タイトルめちゃくちゃ見やすいですよね。

結局これが1番な気がします。
タイトルに魂込めて、それを表紙でめちゃくちゃわかりやすくデザインしていただく。
それを面陳したら、良いタイトルがめっちゃ見やすく目に飛び込んでくる。
そりゃ売れますわ。

あと、意外と表紙だけでどんな内容か想像できるものも多い。
当たり前ですけどね。内容と関係ない絵を使っていたら嘘ですし。

でも激エロねーちゃんの写真を表紙に載せて中身はゴリゴリに大学数学とかでも売れるんですかね?逆に売れそうですね(「逆に」ばっかり)。

ちなみに私が最近1番好きな表紙は、創元社さんの『現代民俗学入門』です。
👇詳しくはこちらから。(勝手に引用してすみません。)

タイトルはイカついのに、表紙はめっちゃ可愛くていいですよね。ほんの少しだけ民俗学に興味があった私はすぐに買ってしまいました(まだ読んでない)。
とても申し訳ないですが、この特別仕様ではない方の従来の表紙では私は買う気にならなかったと思います。正直あまり面白そうじゃなかった(ごめんなさいごめんなさい)。
でもこの特別仕様の可愛い女の子の表紙になって一気に内容へのハードルが下がったし、タイトルが白文字のピンク縁取りで見やすいし、表紙に書いてある疑問と絵がマッチしていて、ハンコに息を吹きかけたことなどないのに、まるで自分にそんな習慣があるかのように気になってしまいました。

そのくらい、表紙は購買意欲に直結する
この『現代民俗学入門』は表紙の威力をここ最近で1番実感した大好きな本です(まだ読んでいない)。

今書きながらふと思ったんですが、表紙イメージから企画を考えるのもありかもしれない。
上で出したような、イカつい社会課題(移民問題とか)について扱っているのに美少女が集合している表紙で「美少女と学ぶ 日本の不法滞在移民問題」みたいな。
アンマッチ過ぎて逆に気になるよ、みたいな。

本を作るのって意外とお金かかるので、ふざけた本出せないのが辛いところですよね。
変なことしか思いつかないのに……


おわりに

思いついたことを何も考えずにそのまま書いているので、ダラダラと書いてしまいました。

現状私の中での売れる本の法則は二つ(三つ)です。

・タイトルがいいこと(個人的には読者を煽るものも好き)
・表紙がいいこと(タイトルが見やすい、内容が分かりやすい、イラストが可愛い)
(・書店で面陳されること)

当たり前過ぎますが、当たり前が1番重要!
この当たり前を意識して、本作りに精進していきたいと思います。


ちなみに、結局内容が良いのが1番だとは思っています。
ただ、内容に関しては著者の方が私のような凡夫には計り知れないような努力をして書かれているので、書店に並んでいる本で且つ明確な著者がいて内容がダメなんてことはあまりないと思っています。

その部分ではなく、著者の力があまり及ばない、本を作る・売るということに関して、編集者ができることを自分なりに考えて今回のnoteを書きました。とさ。

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