アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』
はじめましての人も、
前から知ってる方も、
ごきげんよう。
偏光です。
Pixivで公開してきた小説以外の文章を、
noteに移して行きます。
(文字数:約1300文字)
『メインテーマは殺人』
アンソニー・ホロヴィッツ
山田蘭訳 創元推理文庫 2019年
あらすじ:
自分の葬儀を手配したその日に、老婦人は殺された。
私(アンソニー・ホロヴィッツ自身)は、
知人の「警察協力者」ホーソーンに誘われ、
「事件を解決する彼の活躍ぶり」
を書かされる羽目になる。
小説を切りが良いところまで書きやめる事が難しいように、
推理小説の残り100ページも読みやめる事が難しいよね。
実を言うと私は推理小説の楽しみ方が分からないというか、
自分の楽しみ方に自信が持てないのだが、
それは何も推理小説が嫌いというわけじゃなく、
章立てと、
登場人物リストと、
最初の100ページを読んだあたりで、
犯人が分かってしまう。
しかしトリックだの動機だのは、
さっぱり分かってないので自慢できない!
あくまでも「書き手」の感覚から、
「だろうなぁ」と察するだけで、
そこから先は純粋に、
いかに話が展開されるか、
いかに探偵役に好感や説得力を持たせてくれるかを、
楽しんでいる。
……もしかすると結構みんなそうなのかな?
あと個人的には、
憎い相手にこそ生き地獄を味わってもらいたいので、
わざわざ殺して楽にさせてやる欲求が自分に無くって、
どんな動機を語られても基本納得は出来ませんよね。
だから純粋に探偵達の人となりや世界観で読んでいる。
横溝正史とか、
アガサ・クリスティとか、
江戸川乱歩とかが好きだね。
謎を考える余地が無いって言うか。
雰囲気が強大で読まされるって言うか。
前置きが長くなりましたけど、
アンソニーとホーソーンのコンビはわりと面白かった。
ワトソンとホームズへのオマージュも入ってるけど、
クセのある探偵を一般人が書いてくれると、
世界観そのものは結構薄暗くても読みやすい。
「『カササギ殺人事件』を超える傑作!」
と本屋で銘打たれていましたが、
実はワタクシまだ読んでおりません。
とは言え評判になったから筆者は知っていてね。
そっちはクリスティオマージュらしいから読んでみるかな。
なんせ私は犯人が分かってしまっているものだから、
「おいおい。ここでその発言はまずいだろ」とか、
「トニー(アンソニー)、
そのくらい君は分かっていると思っていたが」
「なんだ。小説家ってのはもっとこう、
想像力豊かじゃなかったのか?」
みたいなツッコミを、
ホーソーンばりに入れてしまえるという、
絶妙な書き進め具合。
自分自身も素材にしてしまえるって、
なかなかスゴい上に、
もちろん既に人気作家という、
自負が無い事には出来ませんよね。
純粋にトニー目線で読んだ人は、
どんな感想になるのかしら興味がある。
ホーソーンが最終的に、
期待を外さない言動をしてくれるのが嬉しいんだよなぁ。
うん。彼はきっとこういう言い方をするっていう、
実在感を一冊の間に、
ただ文章だけで構築できるってところが、
小説という表現形式を楽しめる理由だと思う。