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私がピザを見るとき、隣の子供もまた 秋豆絹

なんとか仕事の山を抜けた今週、突如としてトマトソースが食べたくなってしまった。今日は自炊をして健康的に行こうと思っていたのに、体はファミレスへと向かっている。
欲に見事に負けドアを開けると、残数△の盛況で、いつもは「空いている席におかけください」と声をかけてくれるウエイターさんが直々に席へ通してくれた。

結果、語彙と知識がどこか年相応ではない聡明な少年が年相応にお子様セットを召し上がる隣で、恥じ入りながらマルゲリータピザを食べる羽目になった。(まさか高頻度でピザを食べているわけではないということだけ断らせてほしい。)
恥ずかしい。大人だからこそできるマルゲリータピザ独り占めの横暴を、吸収力のある賢いお子さんの目に入れてしまってよいのだろうか、情操教育に支障をきたしている気がする。

だが私もかけがえない健康を捨ててここへ来ているので、この晩餐を悔いなく享受しなければならない。

美味しい。美味しい。そして聞こえてくる聡明な少年とご家族の会話。
少年がご家族に問いかける。
「日本の人口のうち、65歳以上の人は約何分の一でしょう?」
果たしてお子様セットのえだまめとフライドポテトを前にする話だろうか?
えだまめとフライドポテトもどこかおすましし始めたように見える。
その隣で美味しい美味しいとマルゲリータピザを喰らう私。直に誕生してから四半世紀を迎える。

何とも妙な空間だったが、これが誕生日前最後の晩餐になればよかったのにと思ってしまった。

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