2024年度 メモの中で輝くあなた 秋豆絹
2024年もあと3日。
私は普段、自分のiPhoneのメモ機能を使って、気になった本の題名や、心に留まったけれどもかなりどうでもいいことや、本当にただのメモをしたためている。
今回はその総決算ということで、通勤や用事で外出していた際に遭遇したなんかいい瞬間まとめを紹介していく。
7月、noteに投稿した下書きとなったメモである。
秋葉原駅を訪れるのは大抵何かしらの予定の道中のため、ホームで燦然と輝くミルクスタンドの牛乳をいまだに飲めずにいる。だから余計に、真夏という最高の環境で、牛乳を飲むほど時間に余裕がある男性の姿が私の目にくっきりと映ったのだった。
仕事からの帰路、最寄り駅のエスカレーターを昇りきって地上に出ると、すぐ近くでその光景に出くわした。明らかに他人同士の、柴犬の飼い主と学生たちである。
あれはたしかに熊手だった。彼女は大変めでたそうな熊手を両手で大事そうに握って、遠くまで行く最終電車にひょいと乗ったのだった。
完全出社デスクワークで、体動かしがてらに水を取りに行こうと席を立ったとき、ふと後ろの島にいる嘱託社員さんのデスクの画面が見えた。そこにはメルカトル図法のニューギニア島の地図がでかでかと映し出されていた。こんな明け透けな姿を晒したまま、張本人はどこかへ行ってしまっている。
どこか七面鳥にも見えるこの島を前に、旅行の計画でも夢想していたんだろうか。非常に無邪気な嘱託さんである。
恐らく大学の授業で作成したのだろう、全く同じ機織り機を持って3人の男子学生が電車に乗り込んできた。
1人が私の目の前の席に座り、他2人はドア付近で立って会話していた。私は目の前に座った彼が何をしていたのかはあまり気に留めず、手に持っている物珍しい機械が機織り機である確証を得たくて、そのディティールをまじまじと見つめてしまっていた。
そこへパッと明るいテンションで、蝶々結び完成のご報告が耳に飛び込んできた。覗き込みに行く友達たち。私の視線も彼の足元に落ちる。
そこにはスニーカーの靴ひもでできた、こじんまりとした蝶が息づいていたのだった。