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そもそも対人支援職のバーンアウトとは~海外の資料から探る要因、症状、解決~

世界中であらゆる年齢、人種、性、社会階層の人々が困難を抱える中(もちろんこれを書いている私自身も困難と無縁でいられる保証はありません)そのような人々と対等に関わり、力を与え合う大変魅力的な対人支援職。

しかし心的資源を大きく超える感情労働や、対処しなければいけない膨大なケース数、大量の書類仕事、そして大変さに見合った待遇や社会的注目、支援の欠如により、対人支援職の「バーンアウト」が深刻化しています。【①】

それは日本だけの問題では無く、米国の対人支援職の4割がキャリアの中でバーンアウトしたことがある【②】と感じ、英国でも4割がバーンアウト寸前で常に離職を考える状況とのことです。【①】

バーンアウト症状は一概には言えませんが、全ての物事から引き離されたような感覚に陥り、人と感情を通わせることができなくなり【②】、「壁が迫って来る感覚」「周りの声がよく聞こえない」「自分の動悸のみ聞こえる」等の症状があるそうです。【③】

バーンアウト要因については前述しましたが、より掘り下げると、セルフケア方法が確立されていない経験の浅い人がなりやすかったり、チームビルディングの不十分性もよく指摘されます。(「細かいミスを指摘するだけのマネージャーと組めば『地獄』だが、マネージャー本人に問題を指摘できる人はほとんどおらず、後は仕事を辞めるしかないだろう」という米国の対人支援者の指摘があります【④⑤】)
また、一般社会の常識では想定しづらいことがクライアント周りで発生し、更にそのクライアントと心理的境界線を引きづらいことが挙げられます。【②】

心理的境界線の問題を更に掘り下げると、クライアントと類似の困難を経験したことがある対人支援職の人々はよりバーンアウトしやすく(一方、経験の有無より「受け取り方」がより重要との見方もあります【②】)米国ではアフリカ系かつ女性であるが故に「頑張り過ぎないと評価されない」教師のバーンアウト事例がありました。【③】
(但し様々な困難を経験したからこそ対人支援職になりたいという人々が一定以上いることは、無責任は賞賛は避けるべきですが、素晴らしいことと思います)

バーンアウト予防の方法としては①個人でのセルフケア(深呼吸や水分補給等)、クライアントと一定の境界線を引く等の方法②より良いチームビルディング、サポーティブな雰囲気やシステム醸成、職場環境の改革③行政のリソース支援や援助増大、諸ステークホルダーの連携、といった方法が効果的です。

しかし上記①②③(特に②と③)は同時にやらないと効果は限定的と考えられ(私が調べた限りでは)海外でも行政が積極的にバーンアウト対策をしている事例は多くは見つかりませんでした。

但し、カナダ東端のノバスコシア州のソーシャルワーカー系カレッジでは、同州の児童福祉系ワーカーのバーンアウトが特に深刻で、サービス提供に悪影響が出るということで、腰の重い行政とも交渉、連携し、対人支援職の人々を援助的に監督する(supportive supervision)仕組みを作っているとのことです。【⑥】今後こちらを研究したく思います。

【参考資料】
https://zipdo.co/statistics/social-worker-burnout/

Transcript for Episode 79 (socialworkers.org)

How to Manage Compassion Fatigue, Burn Out, & Work Stress in the Social Work & Mental Health Field - YouTube

Burnout for Social Workers | The Social Work Race Podcast (youtube.com)

NSCSW | Strategy to address social worker burnout: Our way forward



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