貞観政要を色んな視点から見すぎた感想
最初
よくこの本を評価する時に「創業と守成の中でも、守成の本」といった
言葉で評価される本ですが、なんだかんだその評価は正しいと思ってます。
(なんだかんだですが…)
この記事を見に来てる皆さんなら、その評価が皇帝の李世民が房玄齢・杜如晦・魏徴が代表的な当時の臣下の達に投げた問いの、「創業と守成どちらが難きか」のエピソードの話から来ている事はご存知だと思うので、そこについての言及は少なめにしているのはご容赦ください。
さっさと参りたいですが、皆さんがもう少しばかりこの本について
解像度を高めるための、前置きの時間を下さい。
身も蓋もない話ですが、この本がを守成の本と評価されるのは
守成の内容しかないから
と!という事でお願いします!!!
それでは中身に行きまsy
守成の話でたびたび登場し、印象的なシリーズ(Quietが勝手に命名してるもの)が
『皇帝と諫言シリーズ』
ですね。
その中の1つ、
太宗李世民が専用の馬小屋を作るほど可愛がっていた馬がコロっと死んでしまった事の責任を、係の役人を死刑にしようとした際に、皇后がそれを諫めた
というトピックです。
咎め方の要約: 斉の景公が愛馬に死なれ今回と同じような事になった時、優秀な宰相が馬の管理を任されたものの罪状を自らが読み上げて良いかと聞き淡々とその場で読み上げた際の罪状は、
1つ愛馬の世話を任されていながら死なせてしまったこと。
2に我が君主にたかが馬1頭のために人を1人殺させる君主だと知れ渡り、
民心が君主を軽蔑し恨むこと。
3に諸侯がこのことを知ったら我が国を軽んずること
の3つの罪を言い渡し間接的に君主を咎めた。
まぁそうゆうわけですわ
咎められる側への配慮が 咎めている自分の首の安全に直結するので、咎めることを躊躇する人も多い中で「この品と芸のある咎め方はどうよ!?」とも言いたげな 咎め方にも関する内容で興味深いですよね。
(まぁ実際問題君主によっては良い咎め方をしても首が飛ぶ場合が多々ありますが…なんならそこら中で そんな例しか無いような…)
『皇帝と諫言シリーズ』の感想
前述の事柄は中華圏で色濃い儒学系の先人・目上の人を敬う系の思想が
浸透した世界における問題を代表していると思います。
王の前でも頭を下げず、1対1の人間同士として会話するのが普通なギリシア世界、(イメージとして)貴族,市民,自由民,半自由民,奴隷…の 区分の価値・世界観との対比ですね。
中華では(大まかにですが) 皇帝,貴族,民,奴隷…の区分であり、はっきりと分かれているため、身分の差が影響し上位の人による多少の横暴を他人が咎めようがない場合が多々存在します。それを是正するため、「(絶対的な権力者である)皇帝に誰からも信頼の厚い臣下が諫言をする」というシーンが山ほどあります。
正直ぱっとしないですが、このトピックに登場する癪に障らない咎め方は西洋哲学より実践に落とし込めそうな類かもしれないです。
上司にもよりますが、上司も人間です。
人様にケチをつける時は、可能な限り禍根を残さない様に済ませていきたいですし、私たち自身がケチ付けられる側になった時の受け取り方に生かせる様な気がしています。まぁ当時と現代の時代間のギャップがあり、生かせる所は微量かもしれませんが。
まぁ個人的には遠回しな言い方は性分に合わないので洋画の汚いセリフで文句を言うのが好きではあります。
言うなら直接的な方が早くて誤解も少なくて好きです。
クソ野郎にはクソ野郎と言いたいですし。
次に行きますか。
『諫言を咎めるな』
です。
はい、これ。「大事なんだけど現代では今さら言う?」
的な視線で見られそうなトピックですね。
中でもトップから一番上から降ろすタイプのガバナンスで
(特に)大問題として認知されている
"通報者を通報する"
という空前絶後超絶怒涛の問題のタイプを
正式な編纂物とした文書で取り上げていると思ってみると
実は革命的なんじゃないでしょうか? この貞観政要。
とか言いたいです。
ありましたね、例の"営業が貸付け先の集合住宅に真っ当な数の入居者が入っているよう見せかけるため、監査の前にわざわざ部屋のカーテンを降ろしに行っていた。何なら薄々気が付いていた監査部が営業部の言いなりで、トップマネジメント層に報告が出来ていなかった" とか、
ガバナンスが機能せず、不透明で粗雑な融資をして、大問題になっていた
企業が ありましたねぇありました ありました
一体何銀行なんでしょうか、存じ上げませんが。
『諫言を咎めるな』の感想
これ、ほんと1000年以上前の中華とは、まるで世界が違う 現代でも全然重大な問題ですよね。これを取り上げてるあたり、、
皇帝や国家のトップマネジメント層の視点で分かっている地方官吏達の汚職・地方の裁量で可能な法整備の粗雑さ問題などが顕著だったんでしょうね。
と、"地方の裁量"の話を持ち出したのには理由がありまして。
中華の歴史で特に気にしておきたいのが、
領土がデカすぎる(他意は無い)
ため、地方都市の長官達の権力&権限が大きいんですよね。
例えば、ちょうど唐代で、安史の乱を起こしたやべーやつ安禄山
等々
北方の騎馬民族に備え、むっちゃ軍事力や食糧&武器生産能力が高い
官僚。半ば豪族的な輩もいるわけです。そこまではいかなくとも、それに近い立ち位置の地方官僚達に、中央の意思・命令を通すにはかなりの労力が注ぎ込まれます。宮殿勤めの方々は頭を悩ませていたんでしょうね。
終わり:守成の本というこれ
などなど、かなり裏方の事務的な問題…それも
"よくある質問Q&A"的なノリで 『(為政者の)よくある問題Q&A』として
出している所、識字率の問題で古文書は統治者層に向けた意識高い系の
文書ばかりの中華味を感じますね。
(太宗と愉快な仲間達としては)意識高くなって欲しい今後の統治者達の
お手本となる対応の例を出しているのが印象に残りました。
正直これでも書きたい事の40%しか書けていないので、この読書感想文で
興味を持ったらとりあえずで買ってしまっても良い本だなと思っています。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
この:貞観政要 (ちくま学芸文庫) は
魔法少女 黒田★マギカ さんからのリクエストです。
https://www.amazon.co.jp/%E8%B2%9E%E8%A6%B3%E6%94%BF%E8%A6%81-%E3%81%A1%E3%81%8F%E3%81%BE%E5%AD%A6%E8%8A%B8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%91%89-%E5%85%A2/dp/4480096957
もし、皆さんの中に読書感想文を書いてみて欲しい本がありましたら、
Quietの欲しいものリスト(そこに無ければご一報の後、追加します)から
購入いただけると2000文字以上4000以下に収まるよう感想文を書きますのでよければでご検討ください。
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