ご馳走を食べることはその土地を食べること(#私のこだわり旅)
旅行に行ったら、土地のものが食べたいと思う。いわゆる地元の食べ物ってやつだ。食いしん坊だからではなくて(食いしん坊ではあるのだけれど)、その土地ならではのものって、やっぱり珍しくて美味しいものが多いし、どうしてこれを食べてるんだろう、どうしてこういう味が好きなんだろうって考えるとわくわくしてくる。
先日、福島県の会津若松に行った。会いたい人がいたからだ。「会いにきました」とか言って、色々地元を案内してもらった。私は、地元の人のおすすめを聞くのが好きだ。地元の人におすすめがあるのって、間違いなくいい街だと思う。白虎隊のお墓を見たり、城主様のお墓を見たりした。お寺の狛犬が小さい狛犬の頭を触っていて、なんだか子供を叱っているみたいだった。(「狛犬の『コラ』」と密かに名付けた)。
田楽のお店にも連れて行ってもらった。愛知県民の私のイメージと違って大層驚いた。味噌も違うし、種類が豊富だ。(愛知の人は田楽といえば豊橋の豆腐田楽をまずイメージすると思う)。なんだか串カツやさんみたいで、ついついたくさん食べてしまった。
特に面白いなと思ったのが、「しんごろう(写真の一番下)」でご飯をすりつぶして串につけたものが田楽になっている。東海地方でいうところの「五平餅」に似ている。(五平餅は塗ってあるのが赤味噌で、もっと平たい)。「しんごろう」は多分『しんごろう』さんが作ったんじゃないだろうか。そして五平餅もきっと『五平』さんが作っているに違いない。(「御幣に似ているから」説はあえて取らない)。しんごろうVS五平! と、食べながらひとりで震えていた。連れてきてくれた方は変なやつだと思ったろう。うむ。概ね当たっている。
田楽を食べたのは「満田屋」さんという天保5年創業のお味噌の専門店だった。だから店内でお味噌も売っていて、そのほかにもちょっとしたお土産なんかがあった。その中のひとつが「会津のこづゆお料理セット」だ。
聞くと、「こづゆ」は会津地方の郷土料理で、案内してくださった方も、今でも年末に作るんだとか。うちの地元は年末は煮魚を作る。全然違うんだなあと興味深い。
これは、宿泊先ででたこづゆ。昼間に話を聞いたばかりだったので嬉しくて「こづゆだ!」と声が出た。塗りのお椀で食べるのが正式だそう。さすがは会津、漆器の名産地だ。
家で買ってきたこづゆのもとを確かめると、こんな感じ。
干し椎茸、干しキクラゲ、玉麩、銀杏、そして干し貝柱。これに里芋や糸蒟蒻、ニンジンなどを足す。でも、なんだか不思議だ。どうして出汁に貝柱が出てくるんだろう。会津若松って山の中なのに。
家に帰って調べると、こういう文章を見つけた。ちょっと長いが、引用する。
日本海で交易した船といえば北前船だ。北の海産物でできた山のご馳走。太平洋の、それも温暖なところのものばかり食べて育った自分には何もかもが珍しい。年末に食べてきたというからには、きっととっておきのご馳走だったはずだ。海のものでできた山のご馳走。私も早速作ってみた。
味は薄味で、貝柱の出汁が華やかである。郷土料理なのに、普段イメージする「和食」とは少し違った感じがする。キクラゲも入っているし。なんだか中華料理みたい。(思えば、中国も大陸だからこうした乾物でご馳走を作る地域があるのだと思う)5人前がつるんと胃におさまって(何しろ食いしん坊なので)満腹になった。
会津若松ではほかにも色々食べて、お菓子ももらって、たくさん歩いて、温泉にも入ったりした。とても楽しかった。また行きたいと思う。そしたらまた、おすすめを教えてくださいね。
今度は何を食べようかな!
エッセイ No.130
参考にした本など。
田楽を食べたお店。
天保5年創業の味噌専門店 満田屋
「会津のこづゆお料理セット5人前」
株式会社オノギ食品
相馬夕輝 著「つづくをたべる食堂(別冊レシピブック付き)」
D&DEPARTMENT PROJECT