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フリーランスデザイナーが企業ブランディングに取り組むメリット

僕自身が仕事を通じて感じている、フリーランスデザイナーが企業ブランディングに取り組むメリットは以下4つあると思っています。



①形のないデザインが仕事になる

売上が2倍になるカラクリ」の記事でも触れましたが、ブランディングにおける大きなメリットは「形のないデザイン」に対して対価を頂けるようになることです。

こんな事がありました。

某建設関係の会社さんで新たな事業を立ち上げたので、パンフレットの制作だけお願いしたいという相談を頂きました。

打ち合わせにてヒアリングをすると、確かにブランド名もロゴも出来上がっていてWEBサイトも完成している。

でも、よくよくヒアリングをするとターゲットやコンセプトがとても曖昧でかつデザインも内部スタッフが手掛けたらしく素人っぽさ滲み出ていて、正直うまくいくと思えない。

こんなシュチュエーション、デザイナーあるあるですよね?

|ε:)。oO(んん、びみょー、自分がやればもっと良くなるのに、、)心の声

多くの場合、そのまま飲み込んで、パンフレット制作のみを引き受けます。

僕も「形のあるデザイン」のみをしている時はそうでした。

でも、それだと、本当の意味でクライントの為にならない。

これが、20代の頃、デザインの仕事をしながら違和感として僕を悩ませていたことでした。

こんな言葉があります。

お客様が喜ぶことをするな。
お客様の為になることをしろ。

ご依頼通りのパンフレットを制作すればクライアントは一時的には喜んでくれる。

でも、その先々、クライアントの為にはならない。

なので、思い切ってヒアリングした限りの課題感と対策を資料化、そこに伴う見積もりを、パンフレット制作した場合の見積もりと合わせてA、Bパターン用意してご提案しました。

不慣れなこともあり、ドキドキで手汗べっとりでしたが、結果はAを選んでいただきました。

というと、自分にすごく熱意や説得力があったから、と思われそうですが、実はそうではなくて、この時クライアントにとってブランドを再検討せざるを得ない事実を見つけていたからなんです。

せっかく考えたブランド名の商標を調べたところ、全く同じ名称がすでに取得されており、そもそもこのままブランドを立ち上げたら非常にまずいことになるとわかりました。

その後の取り組みでも何度かあるのですが、クライアント側で考えたブランド名が既に商標取得されているケースが多くなっている傾向にあります。

時代背景的に商標への意識が以前より高まっていることが理由としてありそうですが、ブランディングの経験値が浅いとつい見落としがちでもあります。

商標をチェックすることもブランディングを専門とする人間役割りですし、商標取得に関してもきちんと対価を頂くサービスにすることができます。

さて、結論から言うと、Aを選んで頂いた企業様においては、「形のないデザイン」である理念と戦略をきちんと策定した上で、新規ブランドを開発し、結果思い描いたビジョンを辿って現在右肩上がりに成長されています。

おまけの話ですが、新しいブランドネームを複数提案した際に、社長と社長の奥様が「いっせーの」で決めようとその場のノリでなり、結果ご両人同じ案を指差して「初めて俺たちの意見が一致したな!」と喜んでおられました。

今でも微笑ましいストーリーとして度々話題になります。

ブランドは、ただ形にするだけではなく、会社に関わる人の心もきちんと結び付けるそんな役割を果たすこともできます。

②仕事が点ではなく線になる。

①の内容の引き続きですが、当初ご相談頂いた「パンフレット制作」は"点"の仕事で、そこから

企業理念策定→戦略策定→ブランドネーム開発→ブランドロゴ制作→WEBサイト制作→パンフレット制作

と"線"のプロジェクトにしました。

具体的な金額を上げずとも、売上増にかなり貢献していることがわかると思います。

実は多くの場合、クライアントはブランディングとは何をすることか?をきちんと理解しているわけではなく、WEBサイトを作って欲しい、パンフレットを作って欲しい、と言う相談のされ方になります。

その前提に立つと、きちんとブランディングの手段を説明することで、点の仕事を線のプロジェクトへと発展させることができるわけですから、様々な「制作」はブランディングへの入り口とも言えます。

ぜひそのきっかけをチャンスとして活かして貰えればと思います。


③時間的な余裕が生まれ、急ぎの仕事が激減する。

フリーランスになりたての頃、ブライダルのアルバム作成の仕事で、1週間ひたすら写真の選定とレタッチを繰り返して1万円という仕事をしたことがあります。

最終日は徹夜で、納品に車で向かっていたところ、居眠り運転をしてしまいとても怖い思いをしました。

我々デザイナーは良いものを作りたい、という気持ちで徹夜も厭わない人種ですが、その気持ちだけでは自身の労働環境は良くならないばかりか、事故等取り返しのつかないトラブルにも繋がりかねません。

僕がブランディングへ舵を切った理由の一つにもなっています。

通常、企業理念から開発するブランディングは、最短で半年、通常1年かかりますし、それに対して抵抗を持たれる会社さんとお会いしたことがありません。

会社の生涯に大きく関わることですから、それくらい時間がかかるのは適切だろうと"最初から"思って貰えます。

その結果、デザイナーにとっていくつものメリットが生まれます。

・急ぎの仕事がなくなるので、徹夜をしなくてよくなる。

・企業理念や戦略を検討しながら、ブランドのビジョンや成果物、今後の計画をじっくり吟味できる。

・時間が取れている状態なので、妥協せず最高クオリティを目指せる。

・制作費に余裕が生まれるので、外注先に良いデザイナーをアサインできる。(外注デザイナーにとっても適切な費用感で請け負える)

・きちんと結果も出やすくなるので、継続的な取引につながる。

といった具合です。

チラシやパンフレットを3日間で作って欲しい、といった世界とは全く異なります。

クライントにとって、デザイナーにとって、関わる人全ての人が幸せになれる働き方を、ブランディングは実現してくれます。


④下請け業者からパートナーになる。

ブランディングの大切なポイントはここだと思っています。

フリーランスになりたての頃は、元請け、孫請けの下請け業者として、クライアントとは上下の関係にありました。

低価格・短納期はあたり前で、何よりこちらの提案がなかなか届かないことにもどかしさを感じていました。

ブランディングをしていくことで、まずは経営者と直接やりとりできるようになり、上下の関係から横の関係になり、デザイナーの視点でクラアイントにとって本当に必要なことを忖度なく伝えられるようになります。

さらに経営者の幼少や学生時代の頃の経験など、通常中々タッチできない情報にも触れることができます。(理念策定において、経営者の子供時代の経験が重要な要素になってくることがあります)

そうすると、いち業者から経営者にとって必要な価値あるパートナーになり、ますます密な関係で仕事を進められるようになります。

本当の意味で「お客様の為になること」をする為には、上下関係ではなく、横の関係で対等に話あえるパートナーになる必要がありますし、ブランディングがそれを実現してくれます。

以上が、フリーランスデザイナーが企業ブランディングに取り組むメリットです。

この記事をお読みの中には企業経営者もおられるかもしれませんが、デザイナー側からの視点を知るきっかけとして頂ければ嬉しいです。

次回は「企業ブランディングの受注方法」について記事を書かせてもらいますのでお楽しみに。

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