見出し画像

(伝統的な)マレーシアコーヒーvsベトナムコーヒー、そして今後

 長年コーヒーは「ハンドドリップのスペシャリティーコーヒー(ブラック)」と決めてきたことから、去年の11月に東南アジア諸国を回ったときも、そちらの店ばかりを巡ってきていました。
 しかし、諸般の流れで、「伝統尊重」が生まれてきています。やっぱり文化ということで。
 そもそも、東南アジアのコーヒーを、ただ一本で、「練乳入りのただ甘いコーヒー」と括ってきていたのかもしれません。
 もう少し、「マレーシアコーヒー」と「ベトナムコーヒー」とを、比較の観点から特徴を見てみたいと思います。


1.豆の種類

 まずは、主だった豆。マレーシアだって世界的には僅かでもコーヒー豆の生産国です。マレーシア国内でのコーヒー消費のうち、マレーシア内での生産分の割合は不明ですが、少なくとも伝統コーヒーにおいては大半ではないかと思います。「リベリカ種」。
 それに対し、ベトナムは、世界でも生産量4番目のコーヒー大国です。専ら「ロブスタ種」。
 ちなみに世界で言われるスペシャリティーコーヒーは、ほぼ全量が「アラビカ種」です。現在での「おいしいコーヒー」の要素を最も備えた豆、といえます。しかし反面、病気に弱い側面があって、「さび病」と呼ばれる酷い病気が流行ったときに、さび病に強いロブスタ種が脚光を浴びた。そしてリベリカ種は耐性的にロブスタ種ほど強くなかったことから、ロブスタ種との競合において急速に衰退していった、と言われています。
 すなわち、リベリカ種もロブスタ種も、(アラビカ種と比べれば)類似の特性を多く持ち、生産量の面で、リベリカ種が希少の位置付けとなっています。

2.焙煎


 残念ながら、リベリカ種もロブスタ種も、苦みが強く、普通に焙煎をしてもやたら苦いコーヒーになってしまう。そこで、どちらの国でも、これは期せずしてなのでしょうか、もしくは横の連携があったのか、焙煎の時に手を加え、豆に強い甘みを加えてしまう対処をしました。すなわち、「焙煎を2度にわけ、二度目にバター(マーガリン)、砂糖等を加えて焙煎する」。下記の動画が非常にわかりやすいです。いかにも「ねっとりとした」コーヒーにできあがるんですね。

3.抽出

 マレーシアコーヒーとベトナムコーヒーにおいて、1.の豆は違うところを、奇しくも2.の焙煎は同じ過程を踏んでいるようです。実はかなり意外な焙煎方法、ということからも、ここでの両者の経緯については、もう少し正しく把握しておきたいところです。
 そして、その次の段階の「抽出」。ここで外観的に再びの違いを出しました。
 マレーシアは、一般家庭はまだ不明なのですが、コーヒーショップであるコピティアムで多めの抽出をするときは、大きめのネルのドリップで、何度も抽出を繰り返します。大きなポットを使い、勢いよく下のポットに移し替える。店によって微妙に作法は違うのでしょうが、①しっかりとした抽出、②上下の移動で空気に触れさせまろやかさと泡立ちを生む。特にこの②なのですが、基本はお茶のテタレと同じですね。しかも、これは私の理解では南インドのチャイと基本同じです。南インドでもコーヒーは産地でもあってよく飲まれているようです。もちろん同じスタイルで。あれっ!。であれば、マレーシア(そしてシンガポールも)のこのコーヒーの飲み方は「中国(海南)と南インドとの合体」と言えるのでしょうか!?
 片やベトナムです。こちらは抽出に「フィン」と呼ばれる金属製のフィルターを使い、フィルターの細かさにより時間をかけてゆっくりと抽出する。これは上記の①と同じ目的ですね。ここでのルーツは「フランス」にあるようです。

4.飲み方

 抽出の後、更に甘さを加えるため、砂糖を入れたり(あったりなかったり複雑な注文分けがあります)、苦みを和らげるための練乳を、どちらも入れます。(ベトナムのほうはカフェオレの文化が背景になるかもですね)。
 そこで、なぜ牛乳でなく練乳か?
 コーヒーが伝播してきた当時は、冷蔵庫の普及が一般家庭では足らずに、劣化の速度がより遅い練乳が使われるようになったそうです。東南アジアはよく練乳使われますよね。同じ背景なのかもしれません。
 でも、ここには素朴な疑問が生まれます。既に現在では冷蔵庫は十分に普及しています。そこにおいても練乳を踏襲するのは、また何か別の理由があるのでしょうか。

5.それぞれの今後

 特に東南アジアのように、それぞれの国で大国の我儘に翻弄されたり、大きな民族移動の歴史があると、食文化も、それぞれのオリジンの伝統と、それぞれの伝播の国での諸事情とが複雑に融合されて、新たな文化が生まれることがたくさんあります。東南アジアの食文化を見るのは、その点の深堀が一番面白いと私などは思います。例えばコーヒーにおいては、スタートは違うところからでも、途中では同じ地点で交わり、更に別れ、最終的なゴール地点(実際に飲むとき)は、ほぼ同じ場所。って感じです。
 9月10月での現地訪問では、更に客観での視点を入れ込むようにしたいと思います。
 そして今後です。これを見続けていくのが目的です。
「伝統尊重」を大きく掲げる一方で、やっぱり世の中の大きな流れは、そちらのほうが大きいと、私は思います。
 まずは「健康志向」
 砂糖などの甘さの摂りすぎを控える動きは、実際様々あるようなのですが、それは加速していくのではないでしょうか。現実的には、例えば焙煎などの技術は全体的に飛躍的に向上していると思います。
 過去の歴史は歴史として尊重しつつ、技術の向上を活かして、新たな方向性を作り出す。例えば、ジョホール州の「MY LIBERICA」。伝統的なリベリカ種を使い、たぶん焙煎なり他の技術の向上で、立派なSPECIALTY COFFEE に作り上げた。そんな挑戦が各地で見られていくのではないか。


 今後ともそんな面に少しでも光を当てられれば、と思います。
 よろしくお願いします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?