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「異説 東都電波塔 陰陽奇譚」について

※本記事はいち舞台好きの、あくまで素人の感想です。
また、ネタバレを含みます。閲覧の際はご注意ください。

スクリーン×舞台!

まず、本舞台で最も特徴的で驚いた点が一つある。
言わずもがな、舞台にスクリーンが張られていた点だ。
このスクリーンの使い方が面白かった!陰陽のエフェクトやチーム魑魅魍魎の演出、果てはエンドロールでのVtuberさんの登場など、「やりたい演出を楽しんでる感」が見ていて気持ちよかった!

一方で、どうしても役者さんの表情が見辛かったのは名残惜しい点。
せっかく近い席が取れて、細かな演技をしているであろう役者さんの表情が見えない…というのが正直な意見の一つ。

しかし、
・そもそも役者さん(特に推し)の表情を見るのが好き
・自ら端寄りの席を選んでしまった
など、私個人にもかなり原因があると思っているし、この演出を決して批判したいわけでもない。
また、これを差し引いても舞台の雰囲気や他の演出はかなり好きで、結果的には満足できる舞台だったことも事実だ。

カラッとしたコメディ/しっとりとしたヒューマンドラマ

さて、本舞台で好きなポイントはいろいろあるが、真っ先に挙げたいのがこれ。
一見すると「陰陽師vs怪異!」のようなバトル物の舞台の印象を抱いてしまうが、本舞台の魅力は、むしろコメディやヒューマンドラマの部分だと思っている。

「50mでの受け渡しのシーン」や「化け狸のキンタマ」など、非常にテンポよく展開されるコメディはとても見やすかった。
加えて、この雰囲気を次の場面まで引きずらないつくりが素晴らしくて、メリハリがはっきりしていた点がすごく良かった!

この後の所謂「ヒューマンドラマ」パートは見れば見るほどしっとりして(≒落ち着いて)いて、環や式神たちが人間と会話するシーンがとても丁寧だった。(個人的にはリクと辰巳が仲良くしているシーンが好き)
決して派手なシーンではないけれど細かい描写が多く、舞台に確かな深みを与えてくれていたと思う。

少尉/千歳まち さんについて

今回の推しも、もちろん最高にカッコいい!
しかし、それ以上に悲しいキャラクターでもあった。

「騰蛇は怒りを、私は悲しみをその身に宿して~」(意訳)という台詞もあったように、少尉は常にウェットな雰囲気を纏ったキャラクターだった。
本人談はもちろんのこと、この理由は終盤に判明する。
満身創痍で幸田の下へたどり着き命を奪おうとするものの、幸田に「私を殺しても塔の建設は止まらない」と言い放たれてしまうシーン。
恐らく、この時の少尉に驚きはなく、心の何処かで分かっていた事実を突き付けられたことによる「悔しさ」に他ならないだろう。

生まれた瞬間から「先の見えない結末」が見えていて、それでも生まれ持った悲しみを晴らさないと気が済まないような…人間よりも人間らしいジレンマが垣間見える、素晴らしく切ないキャラクターだった。

また、環との絡みもエモくて切ない。(おねショタ……!!!)
最初こそ人間に近づきすぎていた環を詰っていたものの、終盤では「私は人間を知りたかった…」という台詞があったことでようやく少尉の考えが理解できる。
自分のやりたいこと(人間に近づく)をしている環には思わず怒ってしまうし、それは心配の裏返しでもある。
少尉にとって、環は確かに重要な存在だった。

七星宝剣/朝ノ瑠璃 さんについて

私自身、今までそこそこの数の舞台を見てきたつもりだったが…Vtuberさんが出演する舞台はさすがに初めてでビックリ!

はじめに舞台のスクリーンを見たときには、てっきり「ここにVtuberさんが映って演技するのかな…?」と思っていたものの、実際は「七星宝剣」の声を演じるという形だった。
かなり可愛らしいお声ながらも舞台での違和感は全くなく、馴染んでいるどころか、Vtuberさんという肩書を抜きにしてもシンプルに演技が上手い…!喜怒哀楽の表現や緩急が非常にシビアで、終始「すごい」の一言に尽きる演技だった。
「感情豊かなしゃべる剣」を舞台上で演じること困難さは想像に難くないが、そんな「七星宝剣」に確かな存在感があったのは、朝ノ瑠璃さんの演技力が必要不可欠だったことは間違いない。

調べてみると既にアニメへの出演や歌の活動などマルチにご活躍されている方のようで…。納得の演技力です。

おわりに

素晴らしい舞台を作って下さったキャスト及びスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。ありがとうございました!

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