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エレカシのすゝめ #1 出会いについて

私がエレカシことエレファントカシマシに出会ったのは2014年の3月である。
丁度、大学受験が終わって受験勉強から解放されていた頃。当時、第一志望の大学に落ちたが、浪人がギリギリで怖くなってしまい、家にたまたまあった後期試験用の大学の願書を捻り込ませて想定していなかった大学への入学が決まって途方に暮れていた。


高校3年間第一志望に入学することを目標に寝る間も食事をする間も惜しんで一日に10時間以上机に貼り付いていたのに、その努力が水疱に帰した感覚。入学までの春休み、突然できた空白の時間に私は15歳から18歳までの間に失ったものを取り返そうとひたすらに本を読み、映画を見ていた。


その頃の私は俳優の大森南朋さんが好きだったので、彼が出演している映画を順番に見ていた。その時に「東京プレイボーイクラブ」という一本の映画と出会った。内容はフィルムノワール、男女が出会って苦しい現実から逃避行。自分も苦しいけど、別に他人に手を引かれてまで逃げたくないし、ていうか自分はもう逃げてしまってから途方に暮れているのだなんて考えながら眠気と戦いながら最後まで見てエンドロールが流れた。突如、頬を殴られたように目が覚めた。
ど太く重い声が歌う『何度目の太陽だ 何度目の月だ ここは東京だ パワーインザワールド!』。この1フレーズからそれまでに感じたことのない熱量を感じた。続けて『気に入った場所は何処だ?なんだも探し辿り着いた やっぱり飽きたらない やれやれ俺また探すんだ』という歌詞。夢を失ってこの先どうしようと悩んでいた自分にこの曲が「道に迷っているのはお前だけじゃない」と共感してくれている気がした。

突然の出会いに呆然としながらエンドロールだけ3回巻き戻して聞いていた時にふと、

どんな人が歌っているんだろう?

と思いつき、YouTubeを開いた。低く地鳴りのようにど太い声、きっと熊のように大きい人が歌っているんだろう。

生まれてから18年間北海道のど田舎で暮らしてきた自分には馴染みのない日比谷野音ホール。喝采を浴びて出てきたのは色が白く痩せた神経質そうな男。今では同じみのボーカル宮本浩次さんだが、当時の自分は想像とのギャップに困惑したことを覚えている。アイドルのような端正な顔つきの男が舞台の真ん中に歩みより、一声「いえーーーーー」と声を出す。ど太い声で。そんな馬鹿なこの人が歌っているのかと驚いてしまった。

曲が始まり宮本さんが歌い出す。ライブ映像だからかエンドロールで見たものよりずっと迫力があった。細い体を激しく動き回りながら、疲れることなく、むしろどんどん力強く歌い上げる宮本さん。汗が滴る髪の隙間から覗く眼差しがあまりに真っ直ぐすぎて目を離せなくなった。(なんだこれは?)と混乱した。なにより宮本さんに比べて如何に自分が小さいのかと衝撃を受けた。

これが私とエレカシの出会いである。その後、車で1時間の距離にあるゲオでタイトルに惹かれて『エレカシ自選作品集 EMI 胎動記』というアルバムを借りた。一曲一曲、心に刺さりすぎて人生の中でも大事なアルバム。

#エレカシ #大学受験  



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