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ぶんぶんぶんな3日間
この3日間は、「ぶん」づくしだった。
漢字で書くと「文」。
はじめの2日間は、福祉施設の皮をかぶった文化センターに滞在してきた。皮をかぶったという書き方だと嘘みたいになるが、れっきとした障害福祉サービスを実施しており、建物の名称が「たけし文化センター」というところだった。
認定NPO法人クリエイティブサポートレッツが運営している。
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福祉施設なのに「たけし?」「文化?」と頭に「?」が浮かんで当然だろう。
「たけし」はNPO法人理事長である久保田さんの息子さんの名前だ。重度の知的障害のある彼の名前が「たけし」さん。
たけしさんは、物心ついた時から石ころを容器に入れてカチカチならすことが生活の一部になっている青年だ。12年間におよぶ学校教育は、彼から石ころがなくても過ごせるように取り組んだそうだ。でも、ダメだった。ダメというのは社会的な規範が含まれていて適切ではない。言い換えると、そもそも彼から石ころを取り上げようとする発想が間違っていた。
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しかし、学校教育を卒業しても、彼が石ころを手放せない以上、使い方によっては凶器にもなり得る石ころを持ったまま彼が過ごせる福祉施設はなかったそうだ。そんな彼のためにできた居場所が「たけし文化センター」だった。久保田さんは言う。一見取るに足らない行為と思われてしまう個人にとってかけがえのない生活文化を、その人のありのままとして認めていくことが必要なんじゃないか。そんな一人ひとりが持っているその人の文化(在り方)を尊重するための拠点として、障害福祉サービスを使った「たけし文化センター」をつくった、と。
そんな「たけし文化センター」にはシェアハウスが併設している。そこでたけしさんたちは暮らしていて、そこにゲストルームもあって、宿泊させていただいた。そんな彼らの生活文化がありのまま認められている2日間の出来事を書き出すと終わらないので、今回は省略させていただく。ということで、文化の「文」にどっぷりつかったはじめの2日間だった。
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そして、3日目は「文学」だった。「文学フリマ」というイベントに参加してきた。参加というよりも、出店という言葉が適当だろう。文学フリマとは、作り手が「自らが《文学》と信じるもの」を自らの手で販売する文学作品展示即売会で、「日常採集標本店」という屋号で出店してきた。
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奇しくも、店頭にならべたもののひとつが「石ころ」だった。そこらへんで拾ってきた石ころを販売するのは信条に反する。あくまでも、市場価格は0円だけど、自分ならではの価値を見出すことができる「石ころ」への愛おしさを文学というかたちで表現した冊子を購入してくれた方へ石ころをプレゼントするというかたちをとった。
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文学フリマに参加している時はまったく気づいていなかったのだが、その後お風呂にはいっているとき、はたと気がついた。たけしさんの「石ころ」と、わたしの「石ころ」がつながっている!? かもしれないと。文化と文学の「文」も。文化だろうが、文学だろうが、福祉だろうが、とどのつまりは「人」のことをどういう切り口で扱うかに過ぎないのかもしれない。そういえば、わたしは人文学部だったことも思い出し‥‥、ぶんぶんぶんな3日間だったと風呂上がりに振り返ったとさ。
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