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ないものねだりの穴埋め

私は驚くほど映画やドラマを見てこなかった。

ドラマは翌週の展開を待つのが面倒だし、
何となく内容が想像できるような
気がするからである。

学生時代には多くの人がドラマの話で
友達と盛り上がった経験があるだろうが、
私が友人と盛り上がった話と言えば
古畑任三郎ぐらい。

そんな風にこれまであまりドラマを見ずに
人生を生きてきたので、
自分がどんなストーリーを見るのが好きなのか
私はいまいち知らなかった。

ところがそんな私が3か月ほど前から
英語の学習のためにほぼ毎日洋画を
見るようになった。

概ね1日1本のペースで週5本観ているので
今で50~60本程度見ていることになる。

英語の学習が目的なので、
色んなシチュエーションでの言い回しを学べるように
映画のジャンルはできるだけ幅広く
見るようにしてきた。

そんな風に色んな作品を見ていると
何となく自分が見ていて好きだと思える
ジャンルがわかるようになってきた。

どうやら人間のつながりが実感できるような
作品に惹かれるらしい。

特に同性同士の友情の話には弱く、
見終わった後に大抵印象に残ってしまう。

私自身あまり友人が多い方ではない。
いや、友人は殆どいないと言っても過言ではない。

それを別に寂しいと思ったこともないし、
これ以上友人を増やしたいとは全く思っていない。

だが、私は友情の話を描いた映画を観ると
心が動いてしまう。

これは一体どういうことなのだろうか。

もしかすると、映画やドラマの中に
自分が得ることができなかったものを見ることで
私達は快感を得るのではないだろうか。

言い方は悪いが、ないものねだりの穴埋めを
ドラマや映画でしている要素は
間違いなくあるのではないかと思うのだ。

先ほども書いたように色んなジャンルの映画を
これまで見てきたが、
その中でほぼ毎回疑問に思うことがある。

それはあまりに恋愛要素が入った映画が
多いと言うことである。

色んなジャンルをみようと意識して選んでも
感覚的には7~8割程度は必ず恋愛要素が
多かれ少なかれ入っている気がしている。

恋愛の話はストーリーが描きやすいという
作り手の事情も多少はあるだろうが、
これは視聴者がいかに恋愛要素を求めているか
ということであろう。

これはドラマも然りではないだろうか。

いまだにドラマは殆ど見ていないが、
多くのドラマでは何かしら男女の恋愛要素が
取り入れられている気がする。

ではなぜ私達は恋愛要素の入った作品を
観たいと思うのかというと、
やはりその理由もないものねだりの穴埋めでは
ないだろうか。

例えば既婚の人の場合、次の様に考えられる。

結婚をすれば原則としてパートナー以外への
恋愛はできなくなる。

結婚してからもずっと付き合い始めた頃のような
ドキドキした気持ちを保てればいいが、
多くの場合、その感情は時間と共に薄れていく。

これはお互いに求めるものが少しずつ変わり、
長く関係を続けていくには大事なプロセスだと
私は思っているのだが、
中にはその変化を好ましくないと感じる人もいるだろう。

そして、そのような人は恋愛のドキドキを
再び求めるようになる。

だが、ドキドキを求めるために不倫に走るのは
犯罪ではないものの社会的にはNGとされている。

そうなった時に、ドキドキを何に求めるのか。

その一つの答えが映画やドラマではないだろうか。

まさに、ないものねだりの穴埋めである。

そうして考えてみると、
色んな作品を見て自分が惹かれたものを
可視化していくと、
自分が求めているものがあぶり出てくるのでは
ないだろうか。

先ほども書いたように私は友情の物語に
胸を打たれることが多いが、
それは実は強い友情で結ばれた友人との関係に
憧れを持っているからかもしれない。

自分を知るには自分の心が動いた瞬間に意識を向け、
それを書き記していくことが一番だと
何かの本で読んだことがあるが、
まさに映画や本などのコンテンツを見た時は
心が動く絶好のチャンスである。

色んな映画を日々見続け、
そして自分の考えをこうしてアウトプットして
客観的に眺めることで
私は以前よりもかなり自分のことが
わかるようになった気がする。

まだ未知の部分は沢山あるが、
これからも少しずつ自分自身を
覗いていこうと思う。

ちなみに私は映画「めがね」が
とても好きなのだが、
この作品は全体的にゆったりとした空気が
テーマになっている。

日ごろセッカチだと自覚している私だが、
実は何もせずゆったりと過ごすことに
憧れがあるのかもしれない。


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