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食は現地で味わうべし

あなたは”宮崎辛麺”というのをご存知だろうか。

九州の宮崎県でポピュラーなグルメで
宮崎県延岡市にはこの辛麺専門店が
あるほどである。

いわゆるB級グルメに該当するのであろうが、
数年前からちらほらと名前を聞くようになり、
最近ではインスタントの袋めんで
この宮崎辛麺が販売されているので
全国区で知られるようになった。

数か月前にインスタントの袋めんを買って
試しに食べてみたところとても美味しかったので、
我が家ではこれまで2度ほどリピート買いを
していた。

作り方は普通の袋めんと何ら変わらないし、
最後に溶き卵を回し入れれば
普通のラーメンとは少し違った味わいがあって
とても美味しいのである。

だが、これを食べながらずっとある疑問が
私の中に残っていた。

”オリジナルはどれだけこれに近いのか?”
という疑問である。

オリジナルを知っていれば
それが評価できるのだが、
残念ながら私は本家の辛麺を食べたことがない。

なので、私の中の基準はこの袋めんに
なってしまうのである。

もちろんそれはそれで何の問題もないが、
宮崎辛麺を愛する現地の方からすれば
「あれば完全に別物ですよ」となる可能性もある。

自分が美味しいと思ったものだからこそ
オリジナルがどれほど美味しいものなのか
確かめておきたいという気持ちが強くなる。

そんな中、先日宮崎に出張の機会があった。

これは現地で辛麺を食べる最高のチャンスだと
張り切っていたのだが、
今回の出張は1泊2日で飛行機の時間を考慮すると
実質滞在時間は24時間程度。

しかも、到着してすぐに訪問先に向かって
そこからは試作の立ち合いをしなければならないので
正直辛麺を食べに足を延ばす時間がない。

残念ながら今回は諦めるかと思いながら
宮崎空港で帰りの便を待っていると
お土産物屋に現地で作られた宮崎辛麺の
袋めんが販売されているのを発見した。

私がスーパーで購入するものよりも
かなり割高で、中には生めんが入っているものである。

「これはもしかすると現地の味に近いかもしれない」
そう思った私はそれを購入することにした。

家に帰ってお土産として辛麺を見せると
家族はイマイチなリアクションである。

家でも時々食べているラーメンと
あまり変わらなさそうなものを買ってきたので
ガッカリした気持ちはわからないではないが、
少なくとも妻は現地の味に興味を持っていると
思っていただけに私は驚いた。

そんな日から1週間が経過して
昨日の昼食にこの麺を調理してみることにした。

袋に書かれた作り方を見ながら
準備を進めていくのだが、
どうも麺とスープを別に用意する必要があるらしい。

この時点でインスタントの袋めんとは
大きな違いである。

鍋に所定量の水を入れて火をつけながら
袋の中身を取り出す。

生めんとはどんなものかと思っていたが
そこにあったのは半透明の生めんであり
ラーメンというよりも冷麺の麺に近い印象であった。

お湯が沸いたので、書かれたとおりの手順で
麺を湯がいて、スープを作る。

そうして、現地で購入した宮崎辛麺が
完成したのだが、
出来上がったそれは香りも雰囲気も
全くインスタントの袋めんとは異なっていた。

最初食卓に出したときには
妻は宮崎辛麺とは思っていなかったらしい。

早速食べ始めるとその印象は
再び大きく変わった。

インスタントのモノとは味が全く別物だったからである。

インスタントのモノも美味しいのだが、
それとは全然違うタイプのおいしさなのだ。

もともと宮崎辛麺は延岡市の居酒屋で
サイドメニューとして作られたのが
発祥だと言われているようだが、
何となくお酒を飲んだ後にシメとして
食べるにはとても嬉しい感じの
味付けなのである。

辛みもそんなに強くないし、
まさに冷麺のようにシコシコした麺と
さっぱりしたスープ、
そして溶き卵がスープに絶妙に絡んで
とても美味しいものであった。

やはり現地のモノを食べてみてよかったと
私は改めて思った。

私は仕事で海外に行くことが時々あるが、
海外に行くと時々信じられないような
日本食に出会うことがある。

TERIYAKIと書かれながら
明らかに照り焼きではないチキン。

ほぼ酢が入っていない酢飯で作られた寿司。

気持ち程度の乾燥ワカメと薄い出汁で作られた
5$の味噌汁。

どれも日本では考えられないような味付けや
価格設定であるにもかかわらず、
現地の方はそれらを美味しそうに食べている。

それを見ると、「本当の日本食はこんなのではない」と
心の中で思ってしまうのだが、
まさに延岡市の辛麺を知っている方からすれば
インスタントの袋めんは同じような気持ちであろう。

少々面倒ではあるものの、食はやはり現地に赴いて
食べるというのが大事なのだ。

そうして現地の味に触れ、体に取り入れることで
ある意味その土地を自分の中に取り入れることが
できるのであろう。

残念ながら今回は現地で宮崎辛麺を食べるには
至らなかったが、
次回はぜひ現地のお店で食べてみようと思う。

もしかするとその時にも「空港のモノとは全然違う」と
思っているかもしれないが、
その時には同じような内容でnoteの記事にするので
またお付き合いいただけると嬉しい。

ちなみに以前イタリアから来客があった際、
夕食にそこそこ高めのイタリアンに連れて行くと
とあるメニューを見てイタリア人が
店の人に抗議をし始めた。

店の方は英語がわからなかったので
通訳をしてみると、
「ここに書かれているこの料理は本場とあまりに違う」
とシェフに伝えて欲しいということであった。

なんだかこの時、海外でまがいもの日本食を
何も言わず黙って食べた私の郷土愛が
薄いような気がした。

ちなみにイタリア人が言うそのまがいもの料理は
私にはとても美味しく感じられたことは
その時口にしなかったのは言うまでもない。

後がきのあとがきになってしまったが、
どうやら宮崎辛麺の店は全国展開しているらしく
関東の方なら店舗の選択肢があるようである。
ご興味があればぜひ食べてみて欲しい。


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