シチュエーションを見極めよ
昨日ふと職場のデスクを見ると
あまり見慣れないお菓子が置かれていた。
一体何かと思い近くの席の人に聞くと
どうやら営業部でタイに出張に行った人が
買ってきてくれたお土産らしい。
わざわざ私達のところにまで買ってきてくれるのは
嬉しい反面、何だか気が引ける思いをしながら
次に彼らにあった時にお礼の言葉を伝え忘れないように
デスクの上にそれを置いたまま仕事を進めた。
午前にやろうと思っていたことがひと段落し、
次のタスクに移ろうとしたときに
ふとそのお菓子がとても気になる自分に気が付いた。
だが、パッケージに書かれている絵は
明らかにそれがウエハースであることを物語っている。
ウエハースと言ってもビックリマンチョコのような
多少重量感があるウエハースなら好きなのだが、
アイスクリームに刺さっているような
いわゆる普通のウエハースは実はあまり好きではない。
恐らく普段の私なら多少小腹が空いていても
ウエハースに手を伸ばそうという気持ちは起きないだろう。
だが、なぜか昨日の私はデスクに置かれた
ウエハースが気になり、
結局そのまま開けて食べることにした。
開けてみるとそれはまさにアイスクリームに刺さっているヤツである。
ひとかけを口に放り込むと
何の変哲もないウエハースの味わいが広がった。
美味しくないとまでは言わないが、
やはりウエハースの限界点であろう。
そんな風に思いながら私は作業をしつつ
ウエハースを次々に口に放り込んでいくと
あっという間に小さな袋の中は空になった。
空になった袋を捨てようとしたとき
私はふとあることに気が付いた。
「もう少し食べたい」と思っている自分が
そこにいたのである。
冒頭に書いたように私はウエハースが
それほど好きではない。
お菓子の箱の中にウエハースが入っていたとしても
自らそれに手を伸ばすということは
基本的にありえない。
にもかかわらず昨日偶然ウエハースを食べると
なぜかまだ食べたいと思ったのだ。
「それはもらったウエハースが美味しかったのだろう」
そう思うかもしれないが、
このウエハースが取り立てて美味しかったという
わけではない。
では私はなぜウエハースをもっと食べたいと
思ったのであろうか。
そう考えた時に一つの仮説が浮かんできた。
「仕事中に食べたいと思うお菓子は好きなお菓子では
ダメなのではないだろうか」
仕事中にあまりお菓子を食べたりしないので
これまで考えたことがなかったのだが、
この仮説が正しいなら私がウエハースを
もっと食べたいと思ったことに説明がつく気がする。
おやつの時間にお菓子を食べようとするときには
当然ながら自分が好きで、かつ今の自分が食べたいと
思うものを選ぶはずであるが、
仕事中の小腹満たしに食べるお菓子は
同じお菓子を選ぶというプロセスでありながら
求める基準が違うのである。
それはなぜか。
仕事中のお菓子はあくまで仕事がメインだからである。
例えば私はロッテのトッポが好きだが
トッポでは仕事中のお菓子としては
インパクトが強すぎるのである。
自分が好きなお菓子だと当然ながら
それをじっくりと味わって食べたいと思うので
その時点でメインはお菓子に置き換わってしまう。
もちろん休憩時間に食べるのであれば
それも構わないのだが、
仕事中ならばあまり好ましいことではない。
ある意味、今回私が食べたウエハースは
この点でちょうどいい塩梅だったのである。
甘ったるくない程度の甘さ、
バリバリとうるさくない咀嚼感
しつこくない後味
まさに仕事をメインにしながら食べるには
どの要素もちょうどいいのである。
私の働く会社にはオフィスグリコという
オフィス用の無人お菓子販売コーナーがあり
そこに並べられたお菓子を取り、
各自がお金を貯金箱のような箱に入れる仕組みがある。
私自身このオフィスグリコはめったに使わないのだが、
いつも傍から見ながら置かれているお菓子の
種類がイマイチだと感じていた。
これは名前の通り江崎グリコが運営するビジネスであり、
グリコほどの会社になれば顧客ニーズをキャッチするのは
お手の物なはずなのに
なぜオフィスグリコのお菓子の選定はこんなにも
イマイチなのかがずっと気になっていたのだが、
もしかするとこれは仕事中に食べるにはちょうどいい塩梅の
お菓子が選定されているのかもしれない。
そう思いながらオフィスグリコに並んだラインナップを見ると
彼らがこれまで以上に輝いて見えた。
顧客のニーズを的確にとらえることは
ビジネスの基本中の基本であり、
それができないと商品やサービスを売ることはできない。
なので、私達は顧客ニーズをつかむために
色々なマーケティング活動を行ったり
ツールを使ったりしているが、
この時にペルソナ(仮想の顧客)が
どのようなシチュエーションでその商品やサービスを
選ぶかということが抜け落ちていないだろうか。
先ほど書いたようにお菓子ならば
ゆっくりと部屋で落ち着いて食べるとき、
オフィスで仕事をしながら食べるとき、
顧客と歓談しながら食べるとき
それぞれのシチュエーションで求められるものは
明らかに違っているはずなのだ。
顧客ニーズを考えるときに机上で議論をすると
どうしても落ち着いたシチュエーションを
想像しがちになるが、
それでは他のシチュエーションで求められるものと
ズレが生じてしまう。
私も商品開発をする身として顧客ニーズを
考えることは多いが、
自分が顧客のシチュエーションを深く考えられていたかと
問われれば、答えはNoである。
今回偶然私の元にやってきたウエハースは
そんな大事なことを私に教えてくれた。
本で学ぶことも大切であるが、
実は学びのヒントは既にあちこちに転がっている。
今日も着実にそんな学びを拾い
私の糧にしていきたいと思う。
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