美容室と言語化能力
過去の記事を振り返ると
私は髪の毛を切りに行くと
どうもその話題で書きがちなようだ。
それだけ私にとって髪を切ることは
大きなイベントだということの
表れでもあるのだろう。
そして、今日の記事も髪の毛の話題である。
昨日私は髪の毛を切りに行った。
ここ1年ほどはずっと通勤で使う駅の中にある
理容室で散髪をしていたのだが、
どうも最近混み合っていて、
私は行くタイミングを逃していた。
エキナカという時点で理解されている方も
いるかもしれないが、
その店はいわゆる1000円カットである。
(実際には1500円であるが)
私がこの店を使うのは決して値段が
安いからだけではない。
私が散髪で苦手とする要素が
全て排除されているから好きなのだ。
それは何かというと、
余計な会話と待ち時間である。
当然ながら散髪をしに店に入ったからには
最大の目的は思った通りに髪の毛を切ることである。
エキナカにある理容室はこの目的を
確実に遂行してくれて、
余計な要素が全くないうえに時間もお金も
節約することができるので最高なのだ。
ところが、そんなお気に入りの店が
毎回混雑してしまうと、
私が排除したい待ち時間という要素が
入ってきてしまう。
そこで、仕方がないので私が住む街にある
とある美容室に昨日行くことにした。
この美容室にはかつて通っていたのだが、
エキナカの理容室に出会ってからは
めっきり行かなくなっていた。
そんな美容室に久々に入店すると
ちょうど顧客が一人もおらず、
暇なタイミングであった。
私の嫌いな待ち時間が0である。
心の中でガッツポーズをしながら
案内された椅子に座り、
カットの依頼をした。
「耳をしっかり出して、周りはそれに合わせる。
後ろは刈り上げせずに、前髪は眉毛を出す。」
これが私が1年間エキナカの理容室で
言い続けてきた依頼内容である。
エキナカ理容室では毎回カットをしてくれる人が
変わるのだが、この依頼をすれば
不思議なぐらい仕上がりが一定になることに
気が付いたからである。
私は正直理容の免許と美容の免許の
詳しい違いは把握していないが、
もしかすると理容の免許では
顧客の要望の頭の中での変換が
比較的統一されているのかもしれない。
ところが、昨日久々に行った美容室で
私は同じ依頼内容を美容師に伝えたのである。
「了解しました~」と軽やかに言う美容師さん。
私は眼鏡をかけているので、
カット中は当然ながら眼鏡をはずさなくてはならない。
なので、鏡と向かい合ってもカットの仕上がりは
終わってみないとわからないのである。
とはいえ、かつて私はこの店に通っていて
それほどオカシイと思う髪型にされたこともないので
安心して椅子に座っていた。
私の苦手な施術中の会話を
ペラペラとしてくる美容師さん。
仕方がないので私もそれに応答するのだが、
この時点で私はエキナカ理容室が
恋しくなっていた。
そしてカットする手が止まり、
お決まりの2枚鏡をもって後ろの仕上がりを
美容師さんが確認してきた。
正直眼鏡をかけていないので
ハッキリと見えなかったのだが、
「はい、これでOKです」と言って
施術が終了した。
これでようやく解放されると安堵して
眼鏡をかけて会計を済ませ、
私は車に乗り込んだ。
エンジンをかけたタイミングで
そういえば今回の仕上がりを
ちゃんと見ていなかったことに気が付き、
車のサンバイザーの裏についている鏡で
仕上がりをチェックしてみた。
すると、前髪は眉毛のはるか上にあり
もみあげも0ではないか。
確かに耳はちゃんと出ているし
前髪は眉毛を出している。
注文通りと言えば間違いではないのだが、
いつものエキナカ理容室での仕上がりとは
明らかに違う仕上がりになっていたのだ。
これは私の注文内容が美容師さんの頭の中で
変換される際に私の想定とギャップが生じたからである。
よく考えたら言語で説明されたものを
形にするのは実はとても難しいことである。
ある意味理容師も美容師も
顧客の要求する内容にいかに合わせられるかが
仕事の良し悪しになってくるともいえる。
彼らはまさに職人なのである。
ここ最近エキナカ理容室で安定した品質が
出てくることに慢心していた私は
相手に要求をしっかりと伝えるということを
怠ってしまった。
それが今回の失敗の原因である。
ここで元のエキナカ理容室に
戻ってしまっては、
髪型の要求を伝える私の言語化能力が
戻ることはないであろう。
それに何より混雑している状況が
どうなるかはわからない。
恐らく1か月半後になるだろうが、
次回はどのようにこの店の美容師さんに
自分の要求を伝えようかリベンジを
しようと決意した日曜日の昼下がりであった。
言語化は難しいものであるが、
モンチッチのような髪型にされた私の
モヤモヤがこの文章で読者の方に
伝わっていれば嬉しい。
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