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言葉のラリー

先日の土曜日。

家の前で子供たちと遊んでいたときのこと。

息子はサッカーの練習をするので
それに私が付き合い、
娘はホッピングと縄跳びをしながら
その様子を見ていた。

それまでホッピングをしていた娘が
家の中に入り、何かを取り出してきた。

それは子供用のバドミントンであった。

数年前に何かの拍子に購入したものの、
当時は息子も娘も全くラリーにならず
それが面白くないためお蔵入りしていたモノである。

内心どうせ同じようにラリーがつづかず
すぐにやめてしまうだろうと思いながら
息子と娘の3人でそれをしてみることにした。

すると、かつてほど打てない感じでもなく、
上手くいくとラリーが続くようになっていた。

子供たちも自分が狙った通りに打てると
楽しいらしく、
結局それから1時間ほどキャッキャと3人で
バドミントンをして遊んだ。

特に娘は以前したときは全くラケットに
シャトルが当たらなかったので、
それを思うと劇的に成長しており、
本人もそれが嬉しいのか
とても楽しそうな顔が印象的であった。

そして迎えた翌日の日曜日。

息子をサッカーの練習に連れていき、
家に帰ると、娘が嬉しそうな顔で
ラケットを持って待っていた。

昨日の体験がよほどうれしかったのであろう。

残念ながらこの時間は少し風があり
シャトルが風に流されてしまうので
結局10分ほどやって娘は縄跳びをし始めた。

そうしてしばらく遊んでいると
昼食の用意をし始める時間になったので
家の中に入ることにした。

昼食を用意し、息子を迎えに行くと
あわただしい午後が始まる。

平日の夕食の下ごしらえ、
食材の買い出し、
資源ごみの処理 etc…

色々とTo Doが溜まっていたので
淡々とそれらをこなしていると、
3時過ぎになっていた。

娘は部屋にいることに飽きたのか
外で遊びたいと言い出した。

息子は小学5年生なので一人で外で
遊ばせるが、
娘はまだ1年生なので、基本的に妻か私が
見ていないと外では遊ばせない。

だが、私は食事の下ごしらえの途中だったので
終わるまでの間、妻に見てもらうことにした。

何やら外から娘の声が聞こえてくる。

さぞ楽しそうにバドミントンをしているのだろう。

そう思いながら作業を続けること10分ほどで
ちょうど手を止められる状態になったので、
外に出てみることにした。

すると、息子とバドミントンはしているものの
娘の顔は何だか曇っていた。

どうしたのかと思っていると、
娘が私に余っていたラケットを渡してきて
「パパ、一緒にしよう」という。

昨日の様子を見る限り息子はそこそこ上手く
ラリーが続いていたので
息子が下手で面白くないというわけでもない。

一体どうしたのかと思いながら
娘と二人でし始めると、
程なくして娘の表情が昨日のように
明るくなった。

そして、ふと娘がこんなことを言った。

「パパはそうして褒めてくれるから
やってて楽しいんや」

あまり意識をしていたわけではないのだが、
私は娘が打つたびに
「今の打ち方良かったよ」
「うわ、もうちょい。惜しいな」
などと言っていた。

どうやらそれが娘にはとても嬉しかったらしい。

確かに息子としている時には
息子はこのようなことを言わないし、
逆に娘が失敗したときに「へたくそ」などと
言っていたので、
それが娘にはつまらなかったのであろう。

結局それから娘と40分ほどバドミントンをして
その日の練習を終えたのだが、
土曜日よりも明らかにラケットに当たる率が増えて
成長しているのが見える一日になった。

私も子供たちの親として
子供たちへの叱り方、褒め方については
どうあるべきか考えたことは何度もあるが、
自分なりの明確な答えがあるわけではない。

だが、意識をして褒めなくても、
子供たちがやったことを素直に受け入れ、
それについてちゃんと反応してやるだけでも
十分子供たちには伝わるのではないか。

実際、バドミントンをしているときには
娘にどこを直せばいいのか指導もしたし、
決してずっと褒めていたわけではないが、
娘は楽しそうであり、結果として上手くなった。

私としてもこの経験は自分が反応したことが
娘にちゃんと伝わっていてうれしかった。

知らぬ間に自分が発した言葉も
娘は心のラケットでちゃんと打ち返して
くれていたのかもしれない。

そんなことを思った日曜日の夕方であった。

娘がラケットに上手く当てた時に
「今のはしっかりいいところにミートしてたで」
と私が言うと、
娘が「え?ミートって何?ミートソース?」と
聞き返してきた。

そう言えば私が子供の頃に福澤朗氏が
「ジャストミート」と言っているのを聞いて、
「ミートソースみたい」と思った気がする。

遺伝要素ではないのだろうが、
娘が私と同じ発想をしたのが
何だか面白いと思った。



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