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なぜ「悲しみ」をあまり感じなくなったのか

先日とある記事を書いた。

この記事自体はまた機会があれば
読んでみて頂きたいのだが、
この記事のオチで私は越路吹雪さんの
「サン・トワ・マミー」という曲の
「悲しくて目の前が暗くなる」というワードを
引用させて頂いた。

現代では使われないような
言葉のチョイスが素敵だと思い
ここで引用させて頂いたわけだが、
その際、何となく最近「悲しみ」という感情と
少し疎遠になっているような気がしていた。

先日親戚が亡くなり寂しいという感覚は
とても味わったし、
私が子供の頃とてもよくしてくれた叔母の死に
少し涙を浮かべもした。

だが、日常生活においてあまり
「悲しみ」を感じていないような気がしたのだ。

子供の頃は悲しいと思うことがしばしばあった気がする。

親の機嫌が悪いと悲しかったし、
友達と喧嘩しても悲しいと思っていた。

ところが、年齢を重ねていくに従い、
悲しいという感覚を少しずつ感じなくなったような
気がする。

これは一体なぜなのだろうか。

そんなことを考えている時に
偶然読んでいたこの本の中に面白い記載があった。

この本は2006年に第一刷が発行されたので
20年近く前の本ではあるが、
内容自体はまさに今Z世代と言われる若者たちに対して
薄々感じていたことや、
自分自身にも当てはまる部分があり
全然古い印象を受けることはなかった。

本書の中で筆者の速水俊彦氏は
人びとが他人を見下すようになった背景には
仮想的有能感の高まりが要因の一つだと述べている。

仮想的有能感とは自分の能力とは関係なく、
他人を見下したりバカにしたりすることにより得られる
仮想的に自分が有能であるかのような感覚である。

そして、この仮想的有能感の高さと
悲しみを感じないことにはどうやら
相関があるというのだ。

これはどういうことか。

仮想的有能感が高くなると
自分の周りで起きたことに対して
悲しみではなく怒りの感情が起こるというのだ。

例えば、仕事でうまくいかないことがあったとする。
そして、その理由が自分にあったとすれば
仮想的有能感の高い人は他人にその原因があると考え、
仕事でうまくいかなかったことに怒りを覚えるようになる。

本来自分が原因でうまくいかなかったのならば、
そこで自分自身に反省をするのが
自然な反応であるし、その際に悲しみに近い感情は
ごく自然に起こるであろう。

だが、仮想的有能感が高まることで
それが怒りという感情として現れているというのだ。

本書のタイトルでは「若者たち」と書かれているが、
よく考えてみると、この本が発行された2006年に
若者だった人とはまさに私達世代なのである。

私が悲しみという感情を最近感じないと思うのは
実は私も仮想的有能感が高まっているからではないか。

そんな風に考えてみると、なんとなく自分にも
当てはまる部分が多いような気がする。

何気なく読み始めた本に胸を打たれる思いがした。

仮想的有能感が高いがゆえに共感力が下がり、
他人の行動に興味が持てない。

それ故に友人も少なく、どこか無気力な印象がある。

私はどちらかというと行動力があるほうだと自負しているし
周りには無気力には見えていないだろうが、
他人への興味は比較的薄く友人も少ない。

仮想的有能感は誰しもが持つものであると
本書の中にも書かれていたが、
私の中にも間違いなくこの感覚は存在しており、
それは年齢の変化と共に高まったり下がったりを
しているのかもしれない。

では、この仮想的有能感を上げないために
どのようにすればいいのか。

人によってタイプが違うので、
絶対的な方法はないのだろうが、
その一つの方法が自尊感情を高めることだろう。

自尊感情を高め、自分に満足することで
他人を見下すような必要はなくなる。
仮想的ではない本当の意味での有能感を
持つことができればいいのだ。

そして自尊感情を高めるには
自分の感情を素直に出し、誰かと交流することが
必要であると本書にも書かれていた。

私にとって感情を出し、
それをもとに交流する場というのが
ここnoteである。

知らぬ間に私はnoteを書き、人と交流することで
仮想的有能感を手放す練習をしていたのかもしれない。

本書は読みながら色んな気づきがあるとともに
先日読んだ「プライドが高くて迷惑な人」とも
どことなくリンクするような部分があり
非常に勉強になったと感じている。

ぜひ機会があれば読んでみて欲しい。

ちなみに最近読んだこれらの本は
いずれもブックオフで出会い、購入したものである。

100円で売られている本でこれだけ色んな気づきが
得られると思うと、
本は途轍もなくコスパのいいツールである。

本って本当にいいものですね~
思わずつぶやく私であった。


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