マクドナルドが栄える理由に触れた話
昨日家に帰ると何だか妙な雰囲気が
部屋に漂っていた。
どうやら学校から帰った息子が
家のカギを持って行くのを忘れたらしく
家に入ることができない状態で
妻の帰りを長らく待ったらしい。
しかも昨日は地域のイベントがあり、
夕方から友人たちと行こうと
話をしていたらしく、
それに行くことができないと嘆いている。
しかもその場所は車でないと行きにくい立地。
イベント自体は夜遅くまでやっているので
ダメモト彼らがいないかを見に行こうと
私は息子をなだめて車に押し込み
現地に向かった。
たいてい地域のイベントには何かしら
顔を出すようにはしているつもりだが、
今回のイベントは初めて見たような気がする。
車を7分ほど走らせると現地に到着した。
夜までやっているイベントなので
駐車場には既に多くの車が停まっており、
車を停めると息子は早速友達を探しに行った。
私は町内会の方がイベントで芸を披露されるので
その様子をしばらく見ていると、
息子の元気そうな声で呼び止められた。
どうやら無事友達たちと会えたらしい。
私が見ていた芸もちょうど始まったところだったので
その間自由にさせておくことにした。
イベント会場には色んな屋台が出ているので
友達同士で食べて楽しむのであろう。
そうして30分ほどの芸が終了して
私は屋台を見て回り、
妻と娘に何か食べ物を買って帰ることにした。
思ったよりも人が沢山いたので
比較的速やかに買えそうなものを選んで
購入していると、
息子が私を見つけて声をかけてきた。
イベント会場のすぐ近くにある
マクドナルドに友人達と行くというのである。
夜に子供たち同士で行かせるのもいかがなものか、
そんな風に思っていると、
その中の2人のお母さんが一緒に行ってくれるという。
それなら安心である。
私は屋台で料理を受け取ると、
一旦家に帰ることにした。
とは言え、あまり長くお任せしておくわけにもいかない。
家で妻と娘に買ったものを渡し、
現地でのいきさつを説明した後、
私は息子を迎えに行くことにした。
ほどなくしてマクドナルドに到着すると
息子はもうすぐ食べ終わる感じである。
妻と娘には食べ物を買って行ったものの
私は何も食べていなかったので
ついでにマクドナルドで何かを買って帰ろうと
レジで注文をした。
この時、私がマクドナルドを家で食べていると
妻と娘が私も食べたいと
言い出すのが予想できたので、
私は自分のセットと、妻用の月見バーガー単品
そして娘用のナゲット単品を
注文することにした。
間違いを防ぐためなのか、
店員さんは持ち帰りの袋の中を入念にチェックし、
手持ちのシートにチェック印を入れてから
私に商品を渡してくれた。
商品を受け取った私が息子のところに行くと、
ちょうど会もお開きの流れらしく
私は息子を連れて家に帰った。
家に帰ると案の定、妻と娘が
私も食べたいというので私は袋から
月見バーガーとナゲットを取り出して
渡すと彼女らは満足そうであった。
これでゆっくりと落ち着ける。
そう思った私であったが、
袋の中にあるはずのポテトがないことに
気が付いた。
どういうことであろう。
別にバーガーだけ食べるのでも
全く問題ないのだが、
このことを妻に言うと
「そんなんあり得へん。レシート持っていって
もらってきたら?」と言われてしまった。
ポテトのためにもう一度マクドナルドまで
戻るのはあまりに面倒であったが、
何だか釈然としない気持ちもあったので
再び車に乗り店舗に向かった。
そうして店舗でレシートを見せて
店員さんに説明すると、
私が注文した際に店員さんが聞き違えたのか
私の頼んだセットのサイドメニューが
ナゲットということになっていたのである。
つまり、店員さんの聞き間違いはあったものの、
払ったお金は過不足もないし、
入っていた商品も注文通りだったということである。
それなら別にお互いに損はしていないので、
そのまま帰っても良かったのだが、
せっかく再びここまできたのに手ぶらというのも
バカバカしいので
私はポテトを単品で購入することにした。
ところが、このことを相談した店員さんは
まず店側が注文を適切に聞き取れなかったことに
謝罪をしたのである。
私の伝え方が悪かったのかもしれないので
別に気にしていないことを伝え、
ポテトを注文したいというと
店員さんがこんな提案をし始めた。
仮に私がセットのサイドメニューをポテトにして、
ナゲット単品を購入していた場合、
セット価格+260円(ナゲット単品の価格)となる。
だが、今回のケースで私がポテトを追加で
購入したとすれば、
私はセット価格+330円(ポテトMの価格)を
支払うことになる。
店員さんは店側の落ち度で聞き間違えたのに
顧客である私がこの差額の不利益を被るのは
絶対にあってはならないというのだ。
なので、ナゲットの代金である260円を
しはらうことで、
ポテトをお渡しする形でどうかというのである。
そう言われてしまえばこちらとしても
何もNoという要素はない。
快諾して支払いをしてポテトを受け取ると
その店員さんは改めて謝罪の言葉を述べて
私は店を後にした。
帰り道でこの出来事を反芻しながら
私の中で2つの驚きがあったことを
実感していた。
一つ目は店員さんが迅速かつ丁寧に
私の申し出に対応してくれたことである。
ファーストフード店での間違いなど
しばしば起こることであろうし、
形式上の謝罪だけでポテトを受け取って
終了という流れを想像していた。
しかも、結果としてこのケースでは
相手側の入れ間違えではなかったので
金銭的な損得は発生していなかった。
だが、店員さんは私が持参したレシートを見て
瞬時に注文を受ける際のエラーだと認め、
それを丁寧に謝罪してくれたのである。
これに私はとても驚いてしまった。
次に驚いたことは
店員さんがメニューの値段を覚えており、
私がポテトを追加で購入することで生じる
差損にすぐに気が付き、
機転の利いた対応をしてくれたことである。
この件は伝える側の私にも
何かしら落ち度があったかもしれないと
思っていたので、
仮に両者に差額があったとしても
私自身は何も気にすることなく
追加購入だけして帰ろうと思っていた。
だが、店員さんはその差額を認識し、
すぐにこのケースでは私が損をすることを
回避する提案をしてくれたのである。
正直、対応してくれた店員さんは若い男性で
アルバイトの方だと思っていたので
ここまでの対応をしてくれるとは
私は全く想像しておらず、
帰りの車の中で私は密かに感動していた。
マクドナルドはその味もさることながら
このような店員さんの対応があるからこそ
いまだにこれだけの人気があるのであろう。
元々私はあまりマクドナルドに対して
いいイメージを持っていなかったのだが、
今回の一件でそのイメージが変わってしまった。
家に到着した私が既に冷たくなりかかった
バーガーを頬張っていると、
妻と子供たちが私のポテトを狙って
やってきた。
持ち帰りたての温かいポテトは
多くが彼らに食べられてしまったが、
何だかとてもいい経験をした私の心は
温かくなった気がした。