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IKEAは体験型テーマパーク

先日IKEAに行った。

結婚して新居に住み始めた時、
自分たちの家を建てる時、
そんな頃には何度かIKEAに行き
色々見て回ったものだが、
いざ家を建ててしまうと一気に足が遠いた。

家具やインテリアなど
そうそう買い替えるものでもないし、
別に私は北欧に憧れもない。

IKEAは中にレストランが設置されており、
スウェーデン風のミートボールなどが食べられるので
食事だけしに来る方もいらっしゃるらしいが、
私も家族も取り立ててそれが好きというわけではない。

平たく言ってしまうと、IKEA自体は嫌いではないものの
わざわざ行く理由がないのだ。

ところが、ふとした拍子に先日我が家から最寄りのIKEAに
行くことになった。

IKEAの近くにあるとあるテーマパークに
家族で行く途中で妻が突然行きたいと言い出したからである。

目的地のことで頭がいっぱいになっていた
私と子供たちは軽く反論したのだが、
このような思い付きで提案している妻に反論しても
あまりいいことがないのは皆わかっている。

私はハンドルをIKEAの方に切った。

立体駐車場に車を停めて実に7~8年ぶりに
IKEAの店内に入った。

前回来たときには娘はまだ生まれておらず、
小さかった息子がアチコチ走り回って
大変だった記憶がよみがえってくる。

久々のIKEAなので勝手を思い出せずにいると
ちゃんと順路が書かれていることに気付いた。

そうであった。IKEAは最初2階からスタートするのだ。

2階に入るとさながらテーマパークのように
IKEAの商品で飾り付けられたモデルルームが
次々と出てくる。

オシャレなベッドやいかにも北欧っぽいタペストリー、
キッチンの道具から収納家具まで
多種多様なものが売られているのだが、
それらが実際に設置されたモデルルームの中に
自分たちが入っていくことで
だんだん家具を見ているというよりも
部屋全体を選んでいるかのような気分に
なってきた。

「あぁ、こんな部屋なら落ち着きそう」
「このソファがあればゆっくり本が読めそう」
「洗濯機の横にあの棚があれば洗剤が置けるな」

別にモデルルームを買うわけではないのに
そこに自分が住んでいたらどうかを
無視行のうちに考えている自分がいた。

子供たちも同じらしく、
我が家にはない2段ベッドや子供部屋に興奮し、
想像を膨らませているようであった。

このモデルルームだけでいくつあったのだろう。

外から見る限りIKEAの敷地面積は広いはずであるが
中にいると自分がどれだけ歩いたのか
全く感覚がわからなくなる。

だが、数えきれないぐらい多種多様な部屋を見て
私達はそれぞれ頭の中に色んな想像を抱えて
先に進むと、
そこから実際に商品が販売されているコーナーに
入り始めた。

部屋丸ごとは買うことができなくても
自分の部屋にもその要素を少しだけでも
入れることができるかも。

そんなことを思いながらつい商品に
手が伸びそうになる。

だが、冷静になってみると
別に今我が家に必要な家具やインテリアなど
一つもないのである。

モデルルームはどれもオシャレであるが、
それは床の色や壁紙など
トータルでコーディネートされたオシャレさであり
決してそこに置かれた家具やインテリアだけで
得られているものではない。

我が家にそのインテリアが合うかどうかは
全くわからないはずなのに、
どういうわけかそれが合うかのような
錯覚をしている自分がいることに気が付いた。

もちろん、それを購入して実際に設置してみれば
我が家に合うものもあるだろうが、
それはあくまで設置するからこそわかることである。

だが、私達がそれを欲しいと思ったのは
まさに頭の中に理想の部屋を想像したからである。

よく営業の仕事とはモノを売ることではないと言われる。

顧客の困りごとを会話の中から聞きだし、
それを解決できるソリューションを提案することで
結果として商品を売るのが営業の仕事である。

その考えでいくならばIKEAは大型の小売店なので
店員全ての顧客と対話するわけにはいかない。

しかし、前半に多種多様なモデルルームを用意し、
その中から自分の理想の部屋を見てもらうことで、
顧客の中に潜んでいた理想を呼び起こし、
そこに足りないものを想像させることで
後半で購入行動につなげさせているのだ。

顧客自身の頭で対話をさせ、
そしてそこに足りないものを店が提供する。

まさに営業に必要な流れがそこに作られているのである。

今回はすぐに現実にもどった私は妻が色んなものに
手を出しそうになるのを
冷静に諭して止めることができたが、
私まで一緒に入り込んでいれば
色々と購入してしまっていたかもしれない。

結局細々したキッチングッズや掃除グッズを
購入するだけで終えることができた。

顧客にモノを売るのではなく
顧客体験を売る時代になると言われるが、
IKEAが店舗で実施しているのは
まさにこの両者の組み合わせなのだろう。

ちょっと寄るつもりが結局IKEAに2時間少しも
滞在してしまい、
本当に行く予定だったテーマパークの滞在時間が
とても短くなってしまったのは
大きな誤算ではあったが、
これはこれで色んな学びがある経験であった。

お近くにIKEAがあればぜひご家族で
行ってみてはいかがだろうか。

ちなみにちょうど昼時だったので
久々にIKEAのミートボールを食べてみたのだが、
私の感想は「まぁ、おいしい」であった。

めちゃくちゃ美味しくて
また食べたくなるというほどの味ではないが、
何となく異国情緒を味わえただけでも善しとしよう。

個人的にはこれ↓の方が好きなのはここだけの話である。


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