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昆虫と娘と私

金曜日、学童から帰ってきた娘が
何やらお菓子の箱を持っていた。

学童からお菓子を持ち帰ることはあるが、
大抵2~3個の駄菓子を小さな袋に
入れたものである。

あの箱は一体何なのか?

残念ながらその日は夜にオンラインの研修が
開催されていたので、
それが終わってから娘に箱の正体を聞くと、
どうやら学童で外遊びをしている際に
バッタとコオロギを捕まえたらしい。

娘はこれらの昆虫を怖がっていたと
思っていたのだが、
どうやら友達と一緒にとっていると
楽しくなってきたらしい。

箱の中を見てみると
確かにバッタとキリギリスの仲間、
そしてエンマコオロギがいた。

娘はせっかく捕まえてきたので
これらを飼育したいという。

色々と思うところはあったのだが、
いきなり否定してやるのもかわいそうなので
ひとまずクワガタの産卵用に持っている
大型の飼育ケースにそれらを移すことにした。

外側から観察する昆虫たちの様子に
興奮する娘。

早速これらが何を食べるのかを私に聞き、
それを入れてやりたいという。

今回捕まえてきたショウリョウバッタと
キリギリス(ホシササキリ)はどちらもイネ科の植物を食べ、
コオロギはいわゆる雑食性。

しかも過去の経験では飼育下ではバッタは
あまり食べない。

そんなことを思いながらも、
これはいい機会だということで
娘と庭の雑草を見てみることにした。

実は雑草のうちイネ科が占める割合は
結構大きく、
庭先でも色んな種類のイネ科の雑草が
簡単に見つかった。

娘にどれがイネ科の雑草かを教え
それを抜いてもらうと、
娘は「なんでこれが食べる草ってわかるの?」と
聞いてきた。

葉っぱの葉脈の向きを見ればとても簡単に
判別することができると教えると
娘は納得した様子であった。

コオロギの方はちょうど夕食で調理した
ナスのへたの部分があったので
それとキュウリの端を入れてやることにした。

飼育ケースの外から彼らが食べる様子を見ようと
一生懸命に眺める娘。

しばらくするとコオロギがナスに乗り、
それを食べ始めた。

「うわ、パパ見て。コオロギが食べてる」
興奮気味にレポートしてくれる娘。

そんな夜を過ごした翌日の土曜日。

起きてくるなり飼育ケースを眺める娘。

そこで私は娘にある提案をした。

捕まえてきたバッタとキリギリスは
エサをあまり食べないから逃がしてやって、
コオロギだけを飼育してはどうか。

今回捕まえてきたコオロギはメスで
明らかにお腹が大きく、
間もなく産卵する個体なので
このコオロギを逃がして
別のオスのコオロギを捕まえてはどうか。

自分がせっかく捕まえてきたのにと
渋るかと思いきや、
娘はあっけなくその提案を了承し、
私達は朝からコオロギ探しをすることになった。

過去から庭でコオロギが出てくる場所は
知っていたので、
娘と共にそこをチェックしていると
予想通りそこにコオロギがいた。

しかも狙いのオスである。

娘よりもつい私のほうが張り切って
コオロギを追いかけ、
無事捕まえることに成功した。

早速飼育ケースにそいつを入れ、
次の個体を探すことにした。

だが残念ながら庭では
それ以上のコオロギはみつからず、
1匹のコオロギだけを飼育ケースに入れ、
飼うことにした。

捕まえたオスのコオロギを愛おしそうに
眺める娘。

昨日捕まえたコオロギよりも
一回り小さいのはなぜか、
しっぽの先に尖った針のようなものが
ついていないのはなぜか、
色んな疑問を投げかけてくる娘の質問に
答えながら、
この時間は実はとても貴重なものなのではないかと
私はふと思った。

かつて私は息子とも同じような
経験をしたことがある。

息子が取ってきたコオロギやバッタを
飼育しようとケースに入れて、
彼らが食べる雑草の見分け方を教え、
そして、コオロギが潜む場所が
どのような所なのかを教えた。

だが、それから2年ほどすると息子は
全く昆虫に興味を示さなくなり、
今では気持ち悪いとすら言うようになった。

日常の中で昆虫に触れることが
少ないので仕方ないことなのだろうが
何だか私は少し寂しい気がした。

そして、いま娘は昆虫に興味を持ち
いろんなことを私に聞いてくれる。

私はそれが嬉しくてつい色んなことを
教えてしまうのだが、
恐らく娘も息子と同じようにしばらくすると
昆虫への興味を失うのであろう。

そう考えるとこの時間は
とても貴重なもののように思える。

いつまで娘は昆虫への興味を
持っていてくれるかはわからないが、
せっかくなら興味を持っている時期に
少しでも昆虫の面白さを知って欲しい。

行楽日和の3連休だと言われているが、
息子とサッカーの練習をし、
そして娘とは昆虫採取を楽しむことで
終わりそうな予感がしている。

それも今しか味わえない味なのだろう。

この貴重な味を思い切り味わっていきたいと思う。

ちなみに息子が教えたのであろうが、
息子の所属するサッカーチームの子供たちは
練習場や試合会場で昆虫を見つけると
わざわざ私のところに報告に来て、
何の虫かを尋ねてくるようになった。

小学生の頃は昆虫博士と呼ばれていたが、
まさか大人になってからも子供たちに
そのような扱いを受けるとは思っていなかった。

とはいえ、内心ではまんざらでもないと
思っている私である。

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