鬼が笑う発表会
昨日は妻と有休をとって子供たちの
学校イベントに参加した。
私たちの頃でいう学芸会のようなもので
各学年ごとに約10分ほどの発表を聞くという
比較的コンパクトなイベントである。
妻は昨年も参加しており、
それ以前の年はコロナの影響で
開催が見送られてきたので
妻は2回目、私は初めての参加となった。
開場されるのが開始時間の15分前ということで
私達は開場される少し前に到着したのだが、
私たちの前にはざっと見て15人ぐらいの人がいた。
これならばかなり前で見られるだろうし、
1年生の娘もばっちり録画できそうだ。
私は心の中で少し安堵した。
会場の外でしばらく待っていると
開場時間になり、受付を済ませて私達は中に入った。
すると、不思議な事にもうすでに前から3列ほどは
既に席が埋まっており、
私達はその中でベストな場所を探さねば
ならないではないか。
ほぼ空席の場所で席を取ることを想定していたので
一瞬慌てたものの、
ひとまずセンターで前から5列目ぐらいの場所に
席を確保した。
しかし、前に15人ほどしかいなかったはずなのに
なぜ中に入るとこんなにも人がいたのだろうか。
間違いなく息子から渡された資料に書かれた開門時間に
私達は中に入ったはずなのに。
そう不思議に思っていると、
妻が前にいる人たちはPTAの役員をしている方々だと
教えてくれた。
このイベントは特にPTAとは関係がないと思っていたのだが、
もしかすると会場の設営をPTAの方が
手伝ってくださっていたのかもしれない。
それならば前の席を確保するぐらいの特権は
あってもいい気もする。
モヤモヤがないと言えばうそになるが
なんとか自分を納得させながら、
私達は確保した席で開始を待っていた。
すると、最初に先生から観覧にあたっての注意点について
アナウンスが始まった。
ところが、先生がそのアナウンスをされているのに
多くの親が話を続行し続けており
開場はガヤガヤとしたままである。
再びモヤモヤしたのだが、私に何ができるわけでもない。
事前に確認はしていたが、念のため再度携帯を見て
マナーモードになっていることを確認した。
そうして各学年の発表が始まった。
我が家は小1と小5であり、
発表は1年生から順番に始まるので、
早速撮影のスタンバイを始めた。
すると娘たちが入ってきて発表が始まった。
娘はなんだか楽しそうな様子で
何とか撮影するにも困らないような場所に
立ってくれていたのでカメラを向けながら
娘の姿を目で確認した。
そうして1年生の発表が終わり、
ほどなくして2年生の発表が始まった。
今回の発表会は6学年全てを見ても1時間少しの
尺になるものの、
中には自分の子供の発表が終わったら帰る人も
いるかもしれない。
仮に帰らずとも、子供の学年の発表が終われば
後ろの方に席を移動して譲り合いのように
なるだろうと私は考えていた。
ところが、2年生の発表が終わった時に
様子を見てみると、
前の3列は既に予約されていたかのように
決まった人にバトンタッチされており、
全く空く様子がないのだ。
恐らく事前に段取りが話し合われていたのだろう。
言うまでもないが、息子からもらったパンフレットには
どのような席の配置かなどの情報は
全くなかったので、
事前に話し合いができるのは準備に関わった人だけである。
この様子を見ていると、
なんだか常連ばかりが来る居酒屋に
一見で飲みに行ってしまったような
居心地の悪さを私達は感じ始めた。
とは言え、愚痴を言っても仕方がない。
私達は前の人がコロコロと変わる中、
同じ席に座り、息子の発表が始まるのを待った。
ほどなくすると息子の学年の発表が始まり、
私は再びカメラを向けた。
せっかく体育館を使っているので
ステージ上でやればいいのに、
どういうわけか発表の前半はステージの下で
行われており、
前の3列ぐらいしかどう考えても目視では
見ることができない。
カメラで撮るためには手を上に上げれば
撮影できなくもないが、
私がそれをしてしまうと後ろで撮影している人の
迷惑になってしまう。
そう思い、可能な限り前の人の頭のスキマから
息子の様子を撮影しようと試みたが、
画面に映るのは前の人の白髪交じりの頭ばかり。
途中で撮影を止めようかと思いかけたとき、
後半の発表はステージ上になったので
私はそのまま撮影を回し続けた。
そうして息子の学年の発表が終わり、
ひとまず私の撮影は終了である。
私達がいた位置でもあまり発表はよく見えなかったが、
さらに後ろの方はなおさらそうであろう。
我が家の撮影は終わったので、
6年生の発表が始まる前に妻と私は後ろの席に
移動することにした。
6年生の発表はさすがという感じで、
なかなか完成度が高いもので驚きながらも、
カメラ越しではなく自分の目でその様子を楽しんでいると、
あっという間に6年生の発表が終わった。
するとそこで驚いたことが起こった。
6年生の発表が終わった後、多くの保護者が
荷物を持って退席し始めたのである。
だが、プログラムにはまだ「閉会の言葉」が
書かれているにもかかわらずである。
私たちも別に閉会の言葉を楽しみにしていたわけではない。
だいたい校長先生が話す内容は想像できるし、
決して面白いものでもない。
だが、当然それを聞いてから退席すると思っていた私達は
その様子を見て驚いてしまった。
すると、そんな多くの人が退席してガヤガヤする中で
校長先生の閉会の言葉が始まった。
皮肉な事にこうして前にいた人たちがいなくなると
前方はよく見えて、校長先生を撮影するには
ばっちりな感じである。(無論、撮ってはいないが)
校長先生の言葉が終わると、司会進行の先生が
パイプ椅子を端の方に移動させる手伝いを
してほしいとアナウンスがあったので、
私達はそれを手伝うことにした。
多くの保護者が既に退席した後なので、
残った保護者は多くの椅子を運ばねばならない。
せっせと椅子を運びながら様子を見てみると、
私達と同じように椅子を運んでいる保護者の方は
どの方も何だか自分たちと同じような
雰囲気を持っている方のような気がした。
言葉で表すのが難しいが、
「落ち着いている」に近い感じの方ばかりである。
ほどなくして、椅子も概ね片付け終わったので
私と妻は開場を後にすることにしたのだが、
帰り道私はずっと心の中にモヤモヤした気持ちが
残っていた。
授業中に勝手に歩き回る子供がいたり、
授業の進行を妨げてしまう子供がいるという話は
時々耳にする。
我が家の子供たちに聞いてみても、
稀にそのような子供の影響で授業が思うように
進められないことがあるという。
このような話を聞いた時、
自分たちが子供のころからこのような子供はいたものの
私が気づいていなかっただけなのかもしれないと
思っていた。
だが、今回の発表会の様子を見て私は一つ
確信したことがある。
それはそもそも親が何をしてはいけないかを
子供に教えていないのではないのだ。
最後の校長先生の挨拶を聞かずに途中退席をするのは
明らかにマナー違反であるし、失礼な事である。
そんなマナーも守れない親が子供に授業中の振る舞いを
教えられるわけがない。
子供たちの発表自体は良かったものの、
たった1時間少し滞在しただけで
私の中にはモヤモヤが知らぬ間に沢山蓄積していたらしい。
たった1時間でこのような気持ちになるぐらいなら、
私には学校の先生はとてもできそうにない。
改めてこのようなシチュエーションの中で
子供たちを教育し、学校を運営する先生たちのすごさを
実感した。
それとともに
恐らく来年もこの発表を見に来るのだろうが、
1年前の今から来年の会を想像すると気が重くなった。
せめて鬼が笑ってくれたならば善しとしよう。