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小さなハードルは旅のスパイス

先日京都に車で行ったときのこと。

ちょうど紅葉のシーズンということもあり
京都の町は人であふれかえっていた。

この人ごみも含めて旅人の思い出に残るのかと
思いながらハンドルを握っていると、
市バスに多くの外国人観光客の方が
乗り降りしているシーンに出くわした。

私は京都に生まれ育ち、
母はいまだに京都に住んでいるが、
あまりバスに乗る生活をしたことがない。

自宅から大学までは片道約15㎞の距離を
地下鉄やバスに乗ることなく
毎日自転車で通ったし、
四条河原町や京都駅付近に出るのも
全て自転車で行っていたからである。

なので、かつての京都のバスが
どのぐらい混雑していたのかはわからないが、
通りがかるバスを見るとどれも
かなりの乗車率であることが傍から見ても
よくわかるほどであった。

そして、どのバスにもパッと見て外国人と
思われる方がいらっしゃるのだ。

確かに京都の観光名所に行こうと思うと
バスが一番アクセスが良いのはわかる。

だが、自分が逆に海外に行ったとして、
現地のバスに乗ってどこかに行くと考えると
あなたはどう感じるだろうか。

相当ハードルが高いのではないだろうか。

では、もう一つ考えてみてほしい。

あなたが国内の全く行ったことのない地方都市で
最寄り駅からバスに乗ってどこかに行けと
言われればどう感じるだろうか。

「え、バスはちょっと。。。」

そんな風に思うのではないだろうか。

言葉がわかる自分の国の中ですら
バスは正直わかりにくい乗り物である。

バスやバス停を見れば最終到達地点は書かれているが、
その途中でどこをどのように通るのかは
地名だけを見ても全くピンとこないし、
どのぐらいの料金がかかるのか、
支払いのシステムはどうなっているのか、
所要時間はどのぐらいなのか、
未知な要素が山ほどあるからである。

こんな未知の要素にまみれた不安な乗り物を
海外で乗るのはとても勇気がいる事だと
思わないだろうか。

もしかすると、京都のバスを乗りこなすための
とても秀逸なガイドブックやサイトなどが
海外の人向けに出ているのかもしれないが、
これだけ多くの外国人の方がバスに乗っているのは
実はすごいことだと私は思った。

それと同時に、私はふとかつて経験した
ある出来事を思い出した。

私はかつてオーストリアに出張で行った際に
現地で土日を過ごす機会があった。

そこは特段観光地ではない場所だったので、
どこに行こうかと調べてみると
少し離れた場所に
スワロフスキーのミュージアムがあった。

別にスワロフスキーに興味があったわけではないが、
ここで買ったものならばいいお土産になる。

そう思い、そこに行くことに決めた。

ところがそこに行くには大きな問題が一つあった。

バスでないとアクセスできない場所だったのだ。

しかも、私が泊まっていた場所からは
とあるバス停でバスを降りて、少し歩いた別のバス停で
バスを乗り換えなくてはならない。

これを知った時点で少し心が折れかかったが、
本当に最悪の場合はタクシーを使えばいいと思い
一念発起してそこに向かうことにした。

ホテルから歩いてバス停に到着してみると
そこには驚くほど情報が少ない
看板が立っていた。

どこ行きのバスが出るバス停なのかも書かれていないし、
時刻表すら貼られていない。

唯一バス停の名前だけが書かれた看板を前に
心が折れそうになりながらも、
ネットで見た時刻表を頼りに待っていると
到着予定時刻を大幅に遅れてバスが到着した。

バスに乗り込もうとしたが、
日本のように整理券があるのかどうかもわからない。

しかも日本とは違いバスの前の扉が開いたので
ダメモトで運転手に目的地を伝えると、
乗り換えの場所で教えてやると言ってくれた。

 オーストリアは公用語がドイツ語なので
英語が通じる人だっただけでもラッキーである

しばらくバスが走ると運転手に声をかけてもらい、
私は乗り換えのバス停で降りた。

そこから次のバス停まで事前に印刷した地図を片手に
向かうのだが、
どうにもその場所がわかりにくい。

時刻表では乗り換えが10分ほどしかないので
慌てながら探していると、
乗り換え前のバス停よりもさらに簡素な
バス停があることに気が付いた。

そこで次のバスを待つこと20分、
ようやく次のバスが来て私は無事に目的地に
たどり着くことができた。

正直、その後に観たスワロフスキーミュージアムは
あまり記憶に残っていない。

色んなオブジェが置かれていたり
スワロフスキーがキラキラして綺麗だった印象が
残っている程度で、
具体的に何があったか、どのぐらい時間を使ったのか
記憶に残っていないのだ。

だが、行きかえりで乗ったバスは驚くほど
印象に残っている。

旅先で感じるあの不安感、ハラハラ感は
心に強く焼き付いているのだ。

もしかすると、京都でバスに乗る外国人の方にとっても
異国の地でバスに乗るという経験が
旅を記憶に残るものにしてくれているのでは
ないだろうか。

何事も計画通りにスムーズにいく旅は
正直つまらない。

少しハラハラする要素があるぐらいのほうが
旅は楽しくなるものである。

そういう意味ではあえてバスを使うというのは
旅を面白くするスパイスになるのかもしれない。

そう考えると、何だか無性に見知らぬ地で
バスに乗る旅をしてみたくなった。

まだ一度もちゃんと行ったことのない東北地方を
バスで巡ってみる旅なんて想像するだけで
若干ハラハラするが、面白そうである。

早速旅の計画を立ててみようと思う。

あなたには何か旅のマイルールがあるだろうか。
もしあれば、ぜひコメント欄で教えて欲しい。




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