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班決めラプソディ

来月息子は学校行事で4泊の
自然学校に行く。

その準備物などのチラシをここ最近
持ち帰ってきては
息子は何だか嬉しそうであった。

これまで2泊までは家を離れて
過ごしたことはあるが、
親とこれだけの期間離れて過ごす事は
彼にとって初めてなので楽しみなのだろう。

そんな息子が昨日少し浮かない顔で
こんなことを言っていた。

「自然学校の班を決めたんやけど、
なぜか僕以外の男子はクラスで浮いてる人が
二人なんや」

他の班は比較的仲良くしている人が
組み合わせになっているらしいのだが、
どうやら息子はそうではなかったらしい。

確かに息子が同じ班になった男子2名は
私から見ても少し浮いている気がする。

息子は結構色んな人に人気があるし、
決して浮いているタイプではないと思うが、
もしかすると仲がいい人同士でチームを作ると
彼は浮いてしまうのだろうか。

私は気になって誰がこの班分けを決めたのかと
息子に聞いてみると先生が決めたという。

それを聞いて私はあることを確信した。

これは息子だからこそ任されたのだ。

話はさかのぼり私が中学生の頃。

クラスでは修学旅行の班決めが行われていた。
中学生にもなると個性がハッキリするので
仲のいい人たち同志のグループは
既に出来上がっている。

あまり合わない人同士を組み合わせると
思わぬトラブルにもなるので、
半分自由、半分先生の意向のような感じで
班決めが行われていた。

私は当時仲良くしていた仲間たちと
同じ班になるものだと思い
その様子を眺めていたのだが、
ここで一つの問題が生じた。

クラスの中でいつも一緒にいるH君とI君の
二人組だけが取り残されてしまったのである。

H君とI君は二人ともぽっちゃりで大人しく
いつも二人で仲良くしていたが、
他の人との交流は殆どなかった。

班は男子が3人、女子が3人の6人組なので
誰かがこの班に行かなくては合わなくなる。

先生が誰か一緒の班になってくれないかと
呼びかけたが、せっかくの修学旅行を
仲良くない人と一緒の班で過ごしたくはない。

誰からも手が上がらなかったのだ。

静まり返る教室。

何だかバツが悪そうに皆を見るH君とI君。

これではまるでH君とI君が悪いことをしたかのようである。

私はその雰囲気を打ち破りたかったという
わけではないが、
そこで自ら手をあげて彼らと同じ班になることにした。

よく考えてみれば日ごろ一緒に行動しない
彼らと一緒に行ってみるもの面白そうだと
思ったからである。

私が立候補したことで教室に安どの空気が戻り
修学旅行の班決めは無事終わった。

そんな班決めから数日経ったある日、
私は剣道部の顧問であるT先生にふと
放課後の廊下で呼び止められた。

T先生は全く違う学年の担任をされているので
本来知らないはずであるが、
修学旅行の班決めの際の顛末をなぜか知っており、
私の判断を褒めてくれたのだ。

なぜ知っているのかを聞くと担任のY先生が
部活で私のことをよく知る顧問のT先生に
班決めでの出来事を話したらしい。

私のことを先生同士が話をするのは
何となく嬉しいと思いながら
その話を聞いていると、
T先生はこんなことを言った。

「Y先生(私の担任)は挙手が無ければ
しんちゃん(実際そう呼ばれていた)にお願いしようと
思ってたらしいぞ。
誰にでも分け隔てなく優しく接することができて
上手くまとめられるから、
俺が担任でもそうしてたと思うわ」

T先生は部活の顧問として私のことを
キャプテンに指名した人である。

私の個性を見てくれたうえで
判断してくれたことは嬉しかったが、
そんなT先生にこんなことを言われて
私は何だか嬉しさを感じるとともに
自分が持つこの個性は大事にしたいと思った。

結局私の修学旅行はH君I君と一緒の班でも
全然楽しかったし、
彼らと一緒でなければ得られなかった
味わいがあったと思う。

今回息子は自然学校で不本意なグループに
なってしまったと言っていたが、
これは先生が息子だからこそ
この組み合わせにしたのだと思った。

なので私が修学旅行で経験した話を息子にすると、
彼は100%ではないものの納得した様子であった。

少し変わったところのあるメンバーではあるが、
きっと彼は自然学校を楽しむであろう。

そして、その経験はきっと彼にとって
貴重なものになるだろう。

息子は少し不満そうではあったものの
親として何だか誇らしい気持ちになった
金曜日の夜であった。

ちなみに私は修学旅行で東京と横浜に行ったのだが、
ぽっちゃり2人が楽しみにしていた横浜中華街は
思ったほど食べ歩きができる店がなくて
ガッカリしていた。

大人になり神戸の南京町に初めて行ったとき
ここに当時のH君とI君を連れてきてやれば
きっと喜んで肉まんを頬張っただろうと
想像したのはここだけの話である。

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