”棒読み”はなぜ”棒”なのか
私はテレビを見ない。
なので今回新総理が誕生しても
誰が内閣に入ったかは何となく知っていても
総理がどのような答弁をしたのか、
どんな口調で話したのかは知らない。
先日会社の人と新総理の話題になった。
皆が新総裁について思ったことを述べていると、
Aさんがふとこんなことを言った。
「石破さんは答弁が棒読みなのが残念なんですよね」
新総理の口調を聞いたことがない私は
その話にピンとこなかったのだが、
皆が頷いているところをみると
石破新総理の答弁はやはり棒読みなのだろう。
そう思いながら聞いている時、
ふと疑問が浮かんできた。
台詞などを抑揚なく淡々と読むことを
棒読みと言うが、
なぜ”棒”なのだろうか。
抑揚がないだけならば平読み(ひらよみ)などでも
よさそうな気がするが、
なぜだかこの場合、”棒”読みになる。
棒が他に付く言葉を考えてみると
「棒立ち」があるが、
これはとてもシンプルに”棒”のイメージと
つながるので何の違和感もない。
だが、棒読みという言葉はどうにも
シックリこない気がするのだ。
このような時はまず国語辞典に当たることから
始めるのが適切である。
早速Googleで「棒読み」を調べてみると
次のような訳語が出てきた。
私達が一般的に使う「棒読み」の意味は
②の方である。
まさに石破新総理の答弁は
官僚が作成した答弁書を抑揚を無視して
読んでいるからこそ棒読みと言われるのであろう。
だが、「棒読み」という言葉の1番目に来る意味は
この抑揚を無視した読み方ではなく
漢文の読み方についてであった。
私は理系だったのでガッチリではないが、
高校生の頃に漢文には触れたし、
多くの方がそうであるように漢文に苦戦した。
漢字の羅列のような漢文は上から順に
読めばいいというものではない。
そこには返り点というものがあり、
それを入れることにより日本語の
語順に合わせる作用がある。
ある程度数をこなせばある程度違和感なく
読むことはできるのだろうが、
私は漢文自体に興味を持つことができず
この返り点にはかなり苦戦させられた記憶がある。
そんな漢文の返り点などを無視して
読み下す読み方のことをどうやら「棒読み」と
いうらしい。
ある意味ルールに従わないという点では
抑揚をつけない読み方と共通した部分が
ないわけではない。
しかし、何だかイメージが違っているのも事実である。
しかも、そもそもなぜ”棒”なのかは
全くシックリこない。
そこで、次は”棒”の意味を調べてみることにした。
実際調べてみると特に意外な部分はなく、
「まぁ、そうだろうな」と思うような定義が
そこには載っていたのだが、
この中で一つのワードが私の中でひっかかった。
それは「まっすぐな」という点である。
もともと私の頭の中にあった棒の定義には
まっすぐかどうかという点は
入っていなかった。
だが、棒という言葉を使う際には
言われてみればある程度まっすぐなものを
指している気がしなくもない。
(↓こいつも確かにまっすぐである。)
漢文は漢字が綺麗に並んで書かれるので
それを上から順に読んでいけば
確かに棒の様にまっすぐ読むという
意味合いはわかる気がする。
結局調べてみた結果、
”棒読み”という言葉の語源は
それほど面白いものではなかったが、
久々に漢文のことを思い出すいいキッカケになった。
せっかくなので一度YouTubeで
石破新総理の答弁を聞いて、
どの程度”棒読み”なのかを確かめてみようと思う。
できれば総理にはご自身の言葉で
政策を語っていただきたいものである。
この内閣を後で振り返ったときに
箸にも”棒”にもかからなかった内閣と
言われないように願っている。