小説【音からの解放】
音がする。音が聞こえる。
音が耳の奥でのたうち回っている。
ここから出してというような。
解放してくれというような。
私はぎゅっと目を瞑り、ひたすらに時が経つのを待つ。
……どれくらい経っただろう。
音がした。音が聞こえていた。
音が耳の奥でのたうち回っていた。
何かを叩く音は消え去り。
怒号のような声は消え去り。
私はそっと目を開き、ひたすらに時が経つのを待つ。
……どれくらい経っただろう。
ようやく景色が見える頃。
耳を劈く、不快な音がした。
「被検体α5-XY647XX31大成功だ!」
声がする。耳障りな声がする。
耳に入れたくないほどの声がする。
此奴らが。此奴らが私を。
『私たち』家族を。
「これでじんる」
何かが割れる音がする。
何かが落ちる音がする。
不快な音が消えていく。
不快な景色が消えていく。
「はっ……はは……あははははははは!」
私は自由だ。
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